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3~6歳の心・脳・体の発達の特徴

3~6歳。この時期の発達の大きな特徴は「子ども同士の関わり」

3~6歳。この時期の発達の大きな特徴は「子ども同士の関わり」
3歳~6歳。いわゆる園生活では、年少・年中・年長と呼ばれる時期。それまでの時期と比べて、子どもの世界が大きく広がります。そんな時期に子どもとどんな風にむきあい、関わればよいのか。発達心理学を専門とする、河原紀子先生にお話を伺いました。
目次

年少さんにもなると、子どもはぐんと成長して、大人との意思疎通もかなりスムーズになってきます。お世話の手がちょっとずつ離れてくる半面、しつけや学習など今までとはちょっと異なる悩みが出てくる時期でもあります。

そんな3~6歳の時期に、子どもはどんな風に発達していくのでしょうか。また、親としてどんな体験をさせたり、どんな働きかけをしていけばいいのでしょうか。発達心理学の専門家でもあり、保育施設などでのフィールドワークもされている、河原紀子先生に3~6歳の子どもたちについて詳しく伺いました。

「子どもと大人」から「子どもと子ども」の関係性がプラス

3歳から6歳。

属する集団が大きくなり、今までは大人と子どもという対等ではない、おもに庇護される関係が中心だったのが、子どもと子どもという対等な関係も生まれてくるというのが、この時期のもっとも大きな特徴です。

幼稚園であれば、毎日集団生活の場所へ通い始めるという大きな変化があります。 保育園の配置基準でも、2歳児までは保育者1人に対して子どもが6人ですが、3歳児からは保育者1人に対して子どもが20人と大きく変わります。(*実際はもう少し保育者が補充されているケースが多いのが現状です)

この対等な関係の友達との遊びややりとりを通じて、相手にも気持ちがあること、相手と自分の気持ちを調整しなければいけないこと、何か問題があったら話し合って解決するといったことを子どもたちは少しずつ学んでいくのです。

もちろん3歳くらいはまだ一緒に遊ぶといっても、平行遊びといって同じ空間にいても、それぞれが遊んでいる状況です。
が、次第にこのお友達といると安心できるという関係やこの遊びをするならこのお友達、さらにこの友だちといっしょに遊びたいと、人と遊びが重なったりしながら、友達との多様な関係が形成されていきます。

そうした対等な関係性の中で、みんなの中の「ボク、ワタシ」を認識し、自我を確立しながら、さまざまな力を獲得していく。それが3~6歳の子どもたちです。

社会というものに初めて出会うのがこの時期ってことなんですね

編集部

語彙が増えて、一般化や仮定という複雑な思考ができるように

2歳児の語彙数の目安が300~500とすると、3歳児は1000~1500語、4歳児は1500~2000語、5歳児は2000語超~と語彙数が増えるのもこの時期の大きな特徴です。

さらに、「おなかがすいたらどうする?」という簡単な問いに対して、おなかがすいてないから「わからない」と答える、あるいは「おなかがすいてない」と答える時期を経て、「ごはんを食べる」という、『~の時は…する』という一般化ができ始めるようになるのが3歳後半からになります。

また、『もし~だったら』という仮定を考えられるようになるのは、4~5歳ぐらいの時期。

もしも、せっかく作った砂山をお友だちが壊してしまったらという場合も「うっかりふんじゃった、わざとじゃない」という前提条件があれば「許してあげる」。

そんな風に、物事を複雑に理解、思考していけるようになっていきます。
大人にとっては、当たり前のことのようですが、子どもたちにとって、これらは大きな成長だといえるでしょう。

確かに…。そんな風に考えられるようになったことに気づける親でありたいですね

編集部

脳の前頭前野が働きはじめ、「葛藤」する姿が見られるように

そして、最近の脳科学の知見(発見)によれば、4歳すぎたあたり(もちろん個人差はあります)から、脳の前頭前野という部位が働き始めます。ここは、欲求の抑制機能をもつといわれています。

この抑制機能が働き始めると、将来のより大きな成果(ポジティブな行動)のために、ネガティブな自己の衝動や感情、目先の欲求をコントロールする自制心の形成につながっていきます。この頃から自分の行動や感情をコントロールする力を少しずつ獲得していくのです。

みなさんはTV番組の「はじめてのおつかい」をご覧になったことがありますか? あの番組を見ていると、子どもの行動は3歳と4歳後半以降で大きく異なるというのが、じつはよくわかるんです。

3歳以前ですと、おつかいに行けるかどうかは本人の積極性、行動的といった気質や性格に左右されることが多い。

でも4歳後半以降は、「恥ずかしいけれど、買うものがどこにあるかお店の人に尋ねる」「疲れたけど、お母さんが喜んでくれる」「ちょっとこわいけど、大好きなおじいちゃんに会える」とネガティブな感情をコントロールし、それでもポジティブな成果であるおつかいに行くという行動を、どの子も実行しようとし始めるのです。

しかし、この行動はスムーズにいくのではなく、「尋ねようとするけれども恥ずかしくてできない」でもやっぱり「聞いてみよう」という心のゆれが伴います。

この「心のゆれ=葛藤」こそが成長なんです。

葛藤、というとネガティブなイメージでしたがもっとポジティブに捉えていいんですね!

編集部

行動と心の中が違う。そんな複雑さを認めてあげることが大切

わが子の行動を見ていると、この間まではこうだったのに…と思ったりすることはありませんか? 

例えば、お友達と遊ぶときに「入れてー」と声をかけられてたのに、声をかけずに急に輪に入るようになってお友達がびっくりしたなんてことがあるとします。

じつはこの背景には、入れてといったら入れてあげないといわれた経験があったりして、「じゃ、入れて」って言わなければ拒まれないんだ、と子どもが一生懸命考えた結果だったりするんです。

この間は成功したけど今度は失敗したらどうしようと想像ができるようになって、前はできたのにやらなくなったというのもよくあることです。

このように子どもの実際の行動と心の中が違う、ということが出てくるのもこの時期の特徴です。

そうなんです。思う通りに行動しないわが子にイライラすることも

編集部

親としては歯痒かったり、どうして!と思わず声を荒げてしまいそうになったりするかもしれません。

でも、それは1~2歳の時期の自分の思う通りになにがなんでもしたい!という主体的な意識から、他者との関係や過去の経験など複合的な観点で考えられるようになったということの証です。

そのため、子どもがいつもと違う行動を取ったら、「どうしてなんだろう?」と想像してちょっと待ってあげられるといいですね。

その子なりの理由がきっと隠れているはずですよ。

その子なりの意味があるのかも、と思うと親のほうもおおらかに受け止められるかもしれません

編集部

参考文献:「0~6歳 子どもの発達と保育の本(第2版)」(監修・執筆/河原紀子 執筆/港区保育を学ぶ会 学研プラス)
責任編集:おやこのくふう編集部

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お話を伺った方

共立女子大学家政学部児童学科教授 河原 紀子

博士(教育学)。専門は発達心理学。著書に「0~6歳 子どもの発達と保育の本(第2版)」(共同執筆・学研プラス)、「子どもと食:食育を超える」(共著・東京大学出版会)、「ヒトの子育ての進化と文化」(共著・有斐閣)などがある。自身の研究や保育者養成の立場より、保育施設でのフィールドワークにも力をいれている。二人のお子さまのママでもある。

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