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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

【園長に聞く】就学までに育みたい「目に見えない力」考える力、我慢する力、話を聴く力はどう育つ?

【園長に聞く】就学までに育みたい「目に見えない力」考える力、我慢する力、話を聴く力はどう育つ?
兵庫県西宮市の「森のようちえん さんぽみち」の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、幼児期の子育てで気になるあれこれを綴っていただく連載。今回のテーマは「小学校入学までに育まれる力」についてです。
目次

年長の秋ごろになると、時計を見て動く、椅子に座って先生の話を聞く…など、少しずつ小学校入学を意識した活動が増えたり、準備が始まる園もありますよね。

今回のテーマは就学準備について。
親としては勉強についていけるように…と読み書きや数字などを先取りして教えたくなるものですが、おべんきょうの準備よりも、未就学児のうちにしておきたい大切なことがあるという「森のようちえん さんぽみち」の園長・野澤俊索さん。詳しく教えていただきましょう。

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先日、夏前から子どもたちが育ててきたサツマイモのお芋ほりをしました。。畑の三つの畝(うね)にまたがって、お芋のつるが生い茂っていました。そのつるを刈り取ってみんなで運び出して、さあお芋ほりのはじまり!みんな期待に胸をふくらませて土を掘り始めました。

ところが掘っても掘っても、サツマイモはほとんど出てきませんでした。小さくて細いサツマイモがいくつかと、大きいサイズは数えるほど。

じつは夏休みの間に一度、畑をイノシシに荒らされてしまったのです。そのときにずいぶん掘り返されてしまったのと、できかけていたイモは食べられてしまっていたのでしょう。自然のことは思い通りにいかないね、と子どもたちとお話をしました。

思い通りにいかないことは、自然の中では日常茶飯事。雨が嫌だ、風が嫌だといってもそういうお天気になるし、熱い寒いといっても四季は巡ります。思い通りにいかないときに、怒ったり文句を言ったりしても何も解決しません。そのとき、ぐっと堪えて考えたり工夫したりすることで次の道が開かれます。

「自由にする」ためにはさまざまな力が必要になる

私の園は子どもたちが毎日森へ通う"森のようちえん"です。
森遊びは子どもたちの自由と裁量に任され、のびのびと育つことができる環境です。よく「これだけ自由にしていて小学校に入ってから大丈夫なのですか?」という質問をされます。その意味をよく聞くと、"時間に合わせられるか"とか"座って話を聞けるか"とか"学習についていけるか"という意味のようです。

自由にするということは、すべてが思い通りになるということとはちょっと違います。ごっこ遊びをするときにどの役を誰がするかを話し合ったり、お家をつくるのにちょうどいい枝がなければ森を歩いて探したり、つるをとってきて2つをつないでみたり。
このように"したいことを自由にする"ためには、お友だちと話をしたり、工夫をしたり、どこかで我慢をしたりと、いろんな力が必要になります。

自由を使いこなすためには、状況に応じて自分の気持ちをコントロールできるかどうかが大事です。子どもたちは遊びと生活の中でこの力を獲得していきます。そして、ちょうど6~7歳頃にこうした力が備わってくるころ、小学校が始まります。

小学校入学に合わせて準備をするのではなくて、自らの力を使ってたくさん遊び、生活してきたかどうかが大切なこと。時計や学習といった目に見えることはいずれ身につくものなのです。

「話す力」とともに大切な「聴く力」

子どもたちが自分の力を使って自由に遊び、失敗を繰り返しながら生活をすることで身につく力のひとつにコミュニケーションの力があります。言語によるコミュニケーションは、「話す力」と「聴く力」が表裏一体となって成り立ちます。

しかし大人が幼児期の子どもを見るとき「どれだけ話せるようになったか」とか「気持ちをきちんと伝えられるか」といった「話す力」に重点をおいてしまいがちです。でも、それだけではコミュニケーションは成り立ちません。
たとえ授業中にしっかりと椅子に座って先生の話を"聞いて"いるとしても、その意味を理解し、考え、興味をもって聴くことができなければ学習にはつながりません。

人の話をよく聴いている子は、その人が言おうとしていることや考えていることを読み取ることができるようになります。そのときは言葉以上の"行間の意味"まで感じ取ることさえできるのです。

わが子の聴く力を育むために

「聴くこと」は理解すること、考えること、想像することのもとになります。「聴く力」がある子は、相手の気持ちを考えたり、伝えようとしている意味を理解し共感したり、言葉から想像して物事を現実的にとらえることなどができるようになります。
その結果、よりよく伝えたり表現したりができるようになり、コミュニケーションをうまくとるようになっていきます。

目に見えない「聴く力」。子どもたちは言葉と同じように、大人の聴く姿を見て学びます。子どもの言葉はそれがどんな些細なことであっても、相槌を打ちながら、あまり口を挟まないでよく聞いてあげるとよいでしょう。その時間は子どもたちにとってとてもうれしいもの。聞いてもらえるということは、自分の存在を認めてもらったという自己肯定感につながり、同じように話を聞くことができるようになっていきます。

また、絵本の読み聞かせは、言葉や表現を覚えたり想像力を使うだけではなく、聴く力をたくさん使うという面でもとてもよい時間です。

"小学校に入る準備"は、子どもたちを学校の条件に当てはまるようにしつけることではありません。それは、その年齢に達しようとしている子どもたちへの、私たち大人の気持ちの準備をすることではないでしょうか。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは1歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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