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教えて!注目の子育てキーワード「非認知能力」

幼児期から大切にしたい。いま注目の「非認知能力」…ってどんな力?

幼児期から大切にしたい。いま注目の「非認知能力」…ってどんな力?
みなさんは、「非認知能力」という言葉を聞いたことはありますか?これから未来を生きる子どもたちには欠かせない力であり、幼児期から意識していきたいものといわれています。具体的にはどのような力なのか、教育方法学の専門家・中山芳一先生に聞きました。
目次

読み書きや計算ができることよりも、今は「非認知能力」が大切らしい…

でも「非認知能力」ってイマイチどういうものなのかよくわからない…

そんなママやパパは多いのではないでしょうか。

そこで、教育方法学の専門家であり、非認知能力についての著書を多く手がける中山芳一先生に「非認知能力とは何か」について、わかりやすく教えていただきました。

非認知能力とは「点数にできない力」のこと

なんだか難しそう…ちょっと構えてしまいますね

編集部

「非認知能力」。

なかなか、こんな否定から始まる名称ってないですよね。

英語では「Non」、日本語では「非ず(あらず)」ですもんね。

親御さんたちがちょっと構えてしまう気持ち、わかります。

非認知能力という呼び方以外に、「見えない学力」と言われていたり、「EQ=Emotional Intelligence Quotient(心の知能指数)」や、「ライフスキル」「ソフトスキル」などとも言われることもあります。

すべて共通していることは、「測れない力であること」ということです。

私は非認知的能力をひと言で、「点数化できない力」と呼んでいます。

読み書きの力や運動能力といった、点数にできる力は「認知能力」

自制心や忍耐力、意欲や向上心、協調性・社交性やコミュニケーション力といった点数にできない力が「非認知能力」です。

「あなたの忍耐力は75点です」などとは、測ることはできませんもんね。

ちなみに思考力・判断力・表現力のように、認知か非認知かはっきり区別できない力もあります。

非認知能力は認知能力の土台になる力

概念上、認知・非認知として分けていますが、この二つの力を対立させたいわけではありません。

「非認知能力が伸びていけば、認知能力にもプラスの影響を与える」と多くの研究結果があるくらいです。

言わば、認知能力の土台になるのが非認知能力。

土台がぐらつけば、その上もぐらついてしまいますよね。

逆に土台の非認知能力がしっかりしていれば、たくさんの認知的能力を身につけやすくなるというわけです。

大切なのは、言葉や概念に捉われず、その内容を知って、子どもにとってその力がなぜ必要なのか、どのように伸ばしてあげられるかを考えていくことだと思います。

なぜ今、非認知能力が大切だと言われているの?

私たちの子ども時代には言われていませんでしたよね…?

編集部

まさに、今の状況から考えるのが、とても分かりやすいと思います。

2020年が始まったときに、今年は華々しいオリンピックイヤーとなり、国中盛り上がる様子をみなさん想像していましたよね。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、全国一斉休校、オリンピックは延期が決まり、その後緊急事態宣言が出され、自粛生活に突入しました。

緊急事態宣言が解除された今もなお、私たちは不安を抱えています。

今回のコロナ禍は、未曾有の「パニック映画のようなことは本当に起きるんだ」ということを人々に印象づけました。

先行きが不透明な世の中、想定通りにはいかない世の中になってきたということを決定づけたといえるでしょう。

このような予想がつかないことは、「テストで〇〇点取れた」というような知識だけでは、太刀打ちできません。

どこにも正解はないからこそ、自分で、または他者と共にベストな方向を見いだせる力「非認知能力」が必要になるのです。

しっかり勉強して、よい大学・大手企業に入れば安泰。そんな時代ではなくなってきています。

photo by fujika_photography

大学入試で求められる力も非認知能力に変わっています

実際、教育の現場では、入試も変わりつつあります。

全国700ある大学の中で、全体の約10%が個別入試(AO入試、自己推薦入試)になってきており、今後全体の30%まで引き上げていくという指針も文部科学省のほうからあります。

実際私立大学においては、すでに50%ほどになってきているのです。

その内容は、小論文・プレゼンテーション・グループディスカッション・面接など、就職活動と同じような内容により近づいています。

社会に出てから役立つ力を大学入試でも求められ始めているというわけです。

特に医学部の入試問題は目を見張るものがあります。例えば、こんな問題があります。

高校の授業の一環として稲刈りの体験作業があり、あなたはそれに同伴した指導者です。農家の高齢のご夫婦が、お礼にとおにぎりを握って持ってきてくれました。しかし多くの生徒は知らない人が握ったおにぎりは食べられないと、たくさん残してしまいました。これについてあなたはどう考え、生徒や農家の方とどのように話しますか。1000字以内にまとめなさい。

(2019年横浜市立大学医学部医学科小論文試験)

物事を多角的に見て、双方の気持ちを感じながらどう寄り添っていくかその思考を問う問題です。

医師は国家試験に受かる「高い認知能力」が求められますが、それ以上に「医師としての資質」も問われています。

その人が持つ人間性が、今後医師として大成していけるかどうかを入試の段階から見極めているというのがこの問題の意図なのです。

そして、大学入試が変わってきている中、高校・中学・小学校入試も、今後非認知能力を問う出題に変わっていくことが予想されます。

まずは親が「意識を変えていく」ことが大切

photo by fujika_photography

私たち親は子どもに何をしてあげればよいのでしょうか…

編集部

あ、親御さんはそんなに構えないでいいんですよ。

「教えなきゃいけない」「やらせなきゃいけない」そういうことではないのです。

大人ができることはごくごくシンプルで、「見守る」ことなんです。

大人の価値観を教えて、子どもがそれをトレースするのではなく、「自分がどう考えるか」が大切です。

非認知能力は、「自分の意識」で伸ばす力であり、外野がいくら与えようとしてもダメなもの。

そもそも 「教えなければならない」という考えから、まずは大人が変わっていくことが大切ですね。

大人ができることは、子どもをよく見て見守ること…。

それは具体的にはどんなことなのでしょうか。   

次回はもう少し詳しく中山先生にお伺いします。

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お話を伺った方

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。「家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ」(2020年、東京書籍)『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年、東京書籍)ほか著書多数。

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執筆者

ライター 赤司 陽子

大学卒業後、製薬会社での勤務を経て、大手教育関連企業に転職。約10年間幼児教育・小学生教育事業に携わる。その後夫の海外赴任に随行し、アメリカで出産・育児を経験。多様な価値観に触れる。帰国後、フリーのプランナー・エディター・ライターとして活動中。現在、5歳女子・3歳男子の年子育児に奮闘中。

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