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「心の強さ」を育む!ストレス過多時代の子育てとは

大人も知っておきたい「折れない心には弱さこそが必要」。"ここにいていいんだ"とわが子が感じるために今すぐ親ができること

大人も知っておきたい「折れない心には弱さこそが必要」。"ここにいていいんだ"とわが子が感じるために今すぐ親ができること
教育方法学の専門家・中山芳一先生と、これからの未来を生き抜くために必要な"強い心"のつくり方を考える連載。わが子に失敗しても立ち直れる"しなやかな頭"をもってもらうにはどうしたらいい?今回は「自分の弱さを受け入れる」大切さについて考えていきます。
目次

これからの時代にこそ求められる「心の強さ」。
"強い心"をもつことは、大人でもなかなか難しいこと…それをわが子にはぐくむために、ふだんの生活で実践できることは?

非認知能力研究の第一人者、岡山大学の中山芳一先生にお伺いします。

なんでも抱えすぎてしまう人っていませんか?

「自分はどうしても人に仕事を頼めなくて…気が付いたら仕事を抱えすぎちゃって。注意されることもあるんですけど、それでもやっぱり仕事を抱えすぎちゃうんですよね…」

Bさんは自分の仕事上の悩みを赤裸々に語ってくれました。
でも、Bさんが珍しいわけではなくて、意外にこういう人っていませんか?Bさんもそうですが、別に仕事を抱えたくて抱えているわけでもないし、自分の優秀さを見せつけようとしているわけでもないんです。ただ、周りの人に仕事を頼むことができない…。

理由はいろいろあるでしょうが、今回は「折れない心としなやかな頭」がテーマなので、ぜひその視点で考えてみましょう。Bさんの悩みは、私たちに重大なヒントを与えてくれています。

実はBさん、子どもの頃にご両親や周囲の大人に「甘えること」がなかったそうなんです。ご両親もBさんが甘えることに対してあまり良しとしなくて、年齢とともにいつも心のどこかで「しっかり者」を演じるようになっていったそうです。友だちからも「しっかり者のBさん」として見られてしまうから、ますますその期待に応えようとした結果、いまのBさんになってしまいました。

なんでも抱えすぎてしまう人の中には、別に抱えたくて抱えているわけではなく、いつの間にか自分の「弱さ」を見せられなくなってしまい、「甘え」られなくなってしまった人たちがいるのです。

「弱さ」こそが強い心には必要

こんな話があります。

中学校へ講演に行った講師の方が、すごく強そうな中学生となんだか頼りなさそうな中学生の2人に椅子の上へ立ってもらったそうです。そして、「自分が必ず受け止めるから背中から倒れてきてほしい」と告げました。

すると、あれだけ強そうに見えた中学生の方はいっこうに後ろへ倒れてこられないのに対して、その隣にいた頼りなさそうな中学生はすぐさま倒れてきたというのです。

このエピソードの強そうな中学生、どこか先ほどのBさんに似ていると思いませんか?
誰かに甘える、誰かに委ねる、誰かに頼る…そういったことをやりたくてもできない人が実際にいるのです。前回の記事で、私は一見強そうに見える角材の方が、弱そうな竹や柳よりも折れやすいというお話をしました。そうなんです。この「弱さ」こそが折れない心には必要なんです。

ただし、単に弱いというだけでは折れない心になりません。その弱さを自分の中で受け入れられていることで、はじめてこの弱さを折れない心に必要な「強さ」へ変えていけるのです。

それでは、子どもたちはどうやって自分の弱さを受け入れていけばよいのでしょうか?

"いてくれるだけでありがたい"がいつの間にか当たり前になってしまう

明石家さんまさんの座右の名ともいわれている「生きてるだけで丸もうけ」という言葉をご存じですか?私はこれは名言だと思います。
だって、私たちは特別に何かができなくても、こうして生きている(存在している)だけで十分OKなんだということを教えてくれているからです。

だけど、いつの間にか周囲の期待に応えようとしたり、応えられなくて心が折れそうになったりしてしまいます。本当は、何かができてもできなくても、しっかりしていてもしていなくても、生きてるだけで"丸もうけ"なはずなんですけどね…。

さて、この考え方を私たちの子育てに生かしてみませんか?
でも、お子さんに「生きてるだけで丸もうけやでっ!」と繰り返し言ったとしても、それほど伝わらないですよね。

そこでおススメしたいのが、一つのイメージトレーニング(略してイメトレ)です。例えば、みなさんがお相手の方と少しのタイミングのズレで出会わなかったことを想像してみてください。
すると、必然的にみなさんのお子さんは存在しないことになりますよね。よくタイムリープ系の漫画や映画である設定です。

そんなことをガチで想像してみると…どうですか?なんだか急激にお子さんのことが愛おしくなってきませんか?もう、ちょっとしたことができていなくても、そんなことどうでもよくなってきませんか?

わが子って、とにかくここにいてくれるだけでありがたいものですよね。それがいつの間にか当たり前になってしまうから、親としてわが子へ期待や要求のまなざしを向けてしまうんです。

「ここにいていいんだ」という感覚をわが子に

みなさんのイメトレが功を奏したなら、きっとお子さんは「ここにいていいんだ」という感覚を持てるようになるでしょう。みなさんがわが子へ「できるーできない」ではなく「ここにいてくれてありがとう」というまなざしを向けるからこそ、お子さんも自分の中にその感覚を持つことができるようになるんです。

そうすれば、「できない自分」も自分自身の中に受け入れることができるようになります。これは別にできないことをあきらめているわけではありません。
そうではなくて、できるもできないも全部が自分なんだ…というもっと深いところで自分という存在を受け入れることができるようになるんです。これこそが、自分の「弱さ」を受け入れられているということになります。

自分の弱さを受け入れていれば、誰かに甘えることだってできるでしょう。甘えることは決して格好悪いことではありません。むしろ「甘え上手」は大人になっても大切なことだと思いませんか。

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執筆者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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