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わが子をお金オンチにしない!今日から始める金銭教育

「お金の失敗」は幼児期こそ経験させるべき!現役ママFPが失敗から教える"身の丈"にあったお金の使い方とは?

「お金の失敗」は幼児期こそ経験させるべき!現役ママFPが失敗から教える"身の丈"にあったお金の使い方とは?
わが子にマネーリテラシーの高い大人になってほしいと願う親は多いもの。そんな将来のために大切なのは、子どものときの"お金の失敗経験"だというファイナンシャルプランナーの北村由紀さん。子どもサイズのお金の失敗を将来につなげる方法を教えていただきます。
目次

3人の子育て中の現役ママFP・北村由紀です。

お店で子どもがおこづかいから何かを買おうとしている時、そばで親が「それはダメ」などとコントロールするシーンを見かけることがあります。私も一番上の子の幼少期はそうだったので、親心からの声かけということがよく分かります。

しかし、将来お金で苦労してほしくなければ、子どものうちにぜひ「お金の失敗」を経験させてください。失敗は子どもの気付きのチャンス。それを止めてしまうのは、実はとてももったいないのです。

わが子に"自由になるお金"を渡している?

あなたのお子さんは、自由になるお金を持っていますか。「まだ小さいから、お金の使い方を任せるには早い」と思っているママ・パパもいるかもしれませんね。

一方、子どもにレジの前でお金を渡して、"お金を払う練習"をさせるママ・パパは多いことでしょう。もし、お子さんがお買い物に興味を持ち始めているのであれば、その次の段階として、ぜひ実際に"品物を選び買う練習"をさせてみてください。ねだって買ってもらうのではなく、"自分のお金"で練習するのです。

自分のお金なら"真剣にたくさん"考えて使える!

子どもの気付きは、体験してこそ増えていくものです。そのスイッチを押すのが自分の自由になるお金、おこづかいです。自分のお金だと真剣さも増し、たくさん考え、成功も失敗もすべて大きく子どもの心に響きます

たとえば毎月決まった金額をおこづかいとして渡すのであれば、次のおこづかい日まで限られた金額の中で、自分がいちばん幸せを感じるお金の使い方を考えます。

「100円で何が買えるかな?」と物の価値に気付き、たくさんの感情を味わって自分なりの基準ができていくのです。その基準が習慣になり、将来までの金銭感覚を育みます。

小さな子にお金を持たせるのは、最初は親も大丈夫かな?と心配になると思いますが、金銭感覚を育むトレーニングは、親の見える範囲でスタートすることが何よりの安心です。

筆者は一番上の子には小学生になってから自由になるお金を渡したのですが、そのお金を持ってすぐに親の目の届かないところでお友だちと駄菓子屋さんに行ってしまい、ヒヤヒヤしました。十分な練習を親の目が届く範囲でできるのは就学前だと気付き、下の2人は幼稚園に入る頃から少しずつおこづかい制を取り入れました。

少額のおこづかいを自由に使わせてみよう

とはいえ、子どものワクワクと同じくらい大人はお金を安全に大切に使えるかドキドキしますよね。それに関しては、始めるときにしっかりルールを話して、そのラインをこえてしまった時だけ注意すれば十分です。

たとえば、こんなルールです。

  • おこづかいで買うと決めたもの以外は買わない
  • お金は必ずお財布に入れて持ち歩く
  • 使っていいのは親がいいと許可したときだけ(成長段階で緩めていく)
  • おつりは必ず確認し、レシートをもらう
  • お金はおもちゃではない。友だちにお金をあげたりもらったりしてはいけない
  • 最初はこの程度で始めて、成長して行動範囲も物への興味も広がるのにあわせて変えていけばいいのです。

    かわいい子には心を鬼にして口出し無用!

    さて、実際に始めてみると、どんなことが起きるでしょうか。

    はじめは危なっかしく見えるお金の使い方に、つい「またムダ遣いしている!」「それ買うのに足りるの?」と口を出したくなるものです。

    親心からの言葉でも、そうやって口出しをして親がコントロールしていてはなんの練習にもなりません。親は危険回避だけの見守り体制で、口はグッと閉めてこらえましょう。"自由に"お買い物が大切なポイントです。自由だからこそ、やらかしてしまう失敗が学びの種になるのです。

    「失敗」こそが貴重な経験に

    たとえおこづかいの使い方で失敗したとしても、子どもサイズの取り返しのつくものがほとんどでしょう。本当に怖いのは、失敗を知らず守られていた子どもが大人になって周囲に取り返しのつかない迷惑をかけ、何かあれば親や誰かが助けてくれるという依存性の高い状態になってしまうこと。

    子どもサイズのお金で失敗した時にどうするか練習していくことで、大人になるまでに大きな失敗をしないお金の感覚を身につけていけるのです。

    悔しい思いがバネになる

    わが家の失敗体験も紹介しましょう。長男は、夏祭りにその時持っていたおこづかい全額である500円をもって出かけました。当たれば豪華賞品がもらえるくじに惹かれる気持ちを抑えきれずに、1回200円のくじ引きを2回やりました。

    大人の宝くじ同様に夢を買ったわけなのですが、結果は2回ともハズレ。すごく小さな消しゴムと鉛筆に子どもはがっかり。しかも、そのあとで食べたかったかき氷は200円。お金が足りず、買えない悔しさも味わいました。このとき、「確実でないものは1回にして、確実に欲しいものは先に買う」と決めたようでした。

    もちろん、「お金は使えばなくなる」ということも身を持って体験し、次のおこづかい日まで残高ゼロの寂しさを味わったのですが、その分、翌月にもらったおこづかいのうれしさや、欲しいものを買える状況にある安心感は格別な物だったようです。

    買い物の自分基準をみつける

    自由になるお金を使うことは、子どもにとっておつかいのようにお金を払うだけの練習ではなく、自分の欲求と向き合い、上手にコントロールする練習です。欲しいものを手に入れた直後だけでなく、買ったあとも満足が続く自分の買い物の仕方を学びます。そして、その過程で経験した失敗から、自分で考え、解決するスキルを養います。

    子どもが失敗したとき、親としては「気づきポイントきたー!」と心の中ではチャンスとばかりに叫びながらも、子どもには「どうなったらよかったと思う?次はどうしたら同じ失敗にならないかな?」と買った時の気持ちを尊重したうえで、自分で次を考えるヒントだけ話すようにしています。

    子どものうちにマネーリテラシーを育てるには

    国家戦略として金融教育を掲げるという報道がありますが、お金の知識は、学校で学ぶ機会がまだまだ多くないのが現状。そして、お金の知識が生きていく力そのものなら、それは生活の中から学ぶことが何よりのスタートです。

    わが家ではお金に関する知識は、幼少期のうちから家庭でしっかりインプットしていこうと考えています。といっても、何も特別なことをするわけではありません。生活にはどんなお金が必要となるのか、そして家族で幸せに楽しく生きていくために親は働いているんだよと、時には大まかにでも具体的な金額を伝えています。

    たとえば猛暑であれば電気代がいつもよりこんなにかかったとか、食品の値上げでこのホットケーキ1枚がどれくらい高くなったかな?とか生活の中の会話として自然に問いかけています。

    この"家族でお金のことを話す"働きかけで、子どもは温暖化問題や価格高騰などのニュースにも興味を持ち始めるきっかけになっています。テレビから発信される報道内容と自分の生活がリンクすると、子どもはとたんに外の世界に興味津々になるものです。まずはこれがマネーリテラシーを身に付けるスタートになるのではと考えています。

    "失敗"の経験がもたらすもの

    「かわいいわが子にこそ失敗をさせよう」という話をしてきましたが、子どもの頃の痛い経験は将来の失敗を防ぐだけでなく、幸せで豊かな生活につながります。

    お金がたくさんあったからと言って幸せとは限りません。しかし、お金に対する価値観を小さい頃からの習慣として適切に身に付けていれば、どうしたら自分を幸せにできるか、どれくらいが身の丈か、どこまでチャレンジしても大丈夫か、自信をもって生きていけるはず。そんな"お金のジブンものさし"をプレゼントできる大人でいたいですね。

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監修者

キッズ・マネー・ステーション

「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってもらいたい、という想いで設立。 全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2020年までに1500件以上の講座実績を持つ。http://www.1kinsenkyouiku.com/

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執筆者

キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー 北村 由紀

小5・小3・年中の現役ママFPとして和歌山市で親子の学びを応援する教室を開催。「家族の未来にワクワクを」をモットーに、ママ向け、親子向けに家庭で楽しく生きるチカラを育む方法をお伝えしている。他に、行政講座講師、小学生新聞・WEBコラム執筆で活動中。

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