ヘリコプターペアレントとは?子どもへの影響や直し方を保育士が解説

ヘリコプターペアレントとは?子どもへの影響や直し方を保育士が解説
高校生や大学生になっても子どもの生活に干渉する「ヘリコプターペアレント」。どんな親がなりやすいのでしょうか?自覚がある場合の直し方を事例を保育士ライターの炭本まみさんが事例を挙げながら解説します。
目次

子育ての「ゴール」とはどんなことでしょうか。経済的にも精神的にも親の手を借りず自立すること? それとも自分自身で大きな壁を乗り越え問題を解決したとき? そんな子育てのゴールと子どもの幸せを願い、親は一生懸命心をかけて子育てをしていますよね。

その一方で親として当然の「子育て・しつけ」と考えていたことに、子どもとの距離がいつも・いつまでも近すぎて「過干渉・過保護」になっていることがあります。

今回は誰もが当てはまるかもしれない「ヘリコプターペアレント」についてお話をします。

子どもに対してどのような影響が考えられるのか、どのような関わり方が適切なのかを、保育士ライターの炭本まみと一緒に考えていきましょう。

ヘリコプターペアレントとは?

「ヘリコプターペアレント」とは、ヘリコプターがホバリングするように子どものそばへぴったりと寄り添ったまま、つい干渉しすぎてしまい、過干渉・過保護な子育てをする親のことを言います。

この言葉は当初、大人になっていく高校生や大学生になったわが子に対して、まだ過保護に関わる親を指していたようですが、現在は小さな子どもに対しての過保護・過干渉も含み、幅広い年齢の子どもの親にも使われるようになりました。

子どものそばで、その場でホバリングするヘリコプターのように口や手を出すことから、1990年代ごろのアメリカで「ヘリコプターペアレント」と名付けられたと言います。

具体的な親の行動としては、下記のようなことがあげられるでしょう。

  • 高校生や大学生になった子どもの面接や就活に親がついていく
  • アドバイスや助言ではなく親が行動を決定してしまう
  • 子どもが失敗したり悔しい思いをしないように先取りする
  • 子どもが助けを求めていなくても助けてしまう
  • 身の回りの世話を親がしてしまう
  • 友達とのトラブルを親が解決する
このような過干渉・過保護なかかわりを幼少期から青年期・大人になっても続けることは、子どもにさまざまな影響を及ぼしてしまうため、懸念されています。

ほかの「〇〇ペアレント」との違い

「ヘリコプターペアレント」に似た言葉で「モンスターペアレント」という言葉を聞くことが多くなりました。

このように親の子育てや周囲への姿勢については、いくつかの用語があります。

モンスターペアレントとの違い

「モンスターペアレント」の特徴やふるまいとは、学校や教育機関に対し、自分やわが子を中心とした考えで権利を主張したり言いがかりをつける親のことを言います。

なかには暴言や大声を発して言葉の暴力を浴びせる親もいます。場合によっては、恐喝・脅迫罪に問われることもあります。
円滑なコミュニケーションを取り、相互の立場を理解することがむずかしい親です。

カーリングペアレントとの違い

「カーリングペアレント」は、子どもが困難に出会う前に、困難を先取りして取り除いてしまう親を指し、「ヘリコプターペアレント」と同じ意味とされています。

「ヘリコプターペアレント」はアメリカやヨーロッパ諸国で、「カーリングペアレント」はデンマークで呼ばれているようです。

トキシックペアレントとの違い

「トキシック」とは【毒】のことを言い、日本でいう「毒親」のことを言います。 ある程度の年齢を超えても、子どもを過度に支配・管理したり、価値観を押しつけたり、暴言による干渉をする親です。

子どもが自分の思い通りにしないとき、暴言を吐き、恐怖感を植え付けたり不機嫌な態度で子どもを無意識的に抑圧します。

ヘリコプターペアレントは良くない?子どもへの影響

「ヘリコプターペアレント」は、過干渉・過保護な子育てをする親のことと解説しましたが、子どもが困っているのに手を出さない、子どもに責任を持って育てている、子どもが困らないように守っているだけなのに…といった気持ちを抱くかもしれません。

もしもそのままの状態で子育てを続けた場合に想定される、将来の子どもへの影響を考えてみましょう。

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燃え尽き症候群になりやすい

「燃え尽き症候群」とは、努力をしても見合った成果が得られなかったり、意欲的に取り組んできた目標を達成し虚無感を感じ、社会的に適応できなくなってしまう状態を言います。

親の過干渉・過保護が幼少期から青年期を過ぎ、大人まで続いた場合、その子どもは、親からの慢性的なストレスを与え続けられているため、自分に対する徒労感や社会に対する虚無感を覚え、「燃え尽き症候群」になりやすいと言われています。

自己肯定感が低くなる

「自己肯定感」とは、ありのままの自分を認める感覚や感情を言います。

ヘリコプターペアレントに育てられた子どもは、幼少期から失敗や困難を事前に取り払ってもらいながら育ってしまったため、自分で挑戦し失敗から立ち上がってきた経験が極端に少なくなっているでしょう。

そのため、成長してから失敗や困難にぶつかったとき解決策や克服方法が思い浮かばず、社会に出たとき、自分に対する自信が低下します。失敗を重ね、乗り越えた経験が少ないと、完璧な自分しか認められず、心が不安定になってしまう人もいるでしょう。

問題を解決する力が身につかない

「ヘリコプターペアレント」の親は、せっかちで気が利く完璧主義者の人が多いと言われています。

そのため、子どもに起きた問題も見守ることができず、つい口を出してしまったり親が思う正しい行動を促してしまいがちです。
自ら問題を解決する機会が少なかった子どもは、自主的に問題解決する能力が井につきづらいでしょう。

コミュニケーション能力が育たない

子どもの自立や主体性を尊重せず、親の思う理想的な行動をさせられ育った子どもは、人とのコミュニケーションを取ることにむずかしさを感じ、関わり方がわからなかったり、わかっていても積極的に人と関わろうとしなくなってしまいます。

自らの意思で相手に関心を持ち、コミュニケーションをはかろうとする場面さえも「ヘリコプターペアレント」に奪われてしまうと、人とのかかわりがむずかしく感じたり、怖い・面倒と感じたりする人になる可能性もあるでしょう。

決断力が身につかない

ものごとを自ら決断したり選んだりしてきた経験が乏しいと、学校生活や社会においても、決断をほかの人に委ねたり、自分の意思で決断できなくなることも考えられます。

へリコプターペアレントになっていない?診断チェック

これまでの子育てを振り返り、「ヘリコプターペアレント」の特徴と自分を照らし合わせてみませんか。

「ヘリコプターペアレント」の特徴を見ながら、チェックしてみましょう。

1.生真面目で親切な性格である

家の中や服装、時間やルールなど、きっちりとしていないと落ち着かず、他人や家族にもそれを求める。

2.子どもが決める・選ぶのを待てず、つい親が決める

子どもが選ぶこと、決めてもいいことに対しても、待つことがむずかしく、「これでいいでしょう?」「これが好きだよね?」などついつい言葉をかけ、親が決めてしまう。

3.子どもに対して自分なりの「理想像」がありそこへ近づきたい。

子どもはこうあるべき、こんな子どもになってほしいという子どもの将来の姿や、子育てはこうあるべきであるという理想像がある。また、そこへ近づきたいしそうなるように子育てをしている。

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4.愛情を注ぐこととは、お世話をし子どもに尽くすこと

子どもを大切に思うあまり、子どもの基本的な生活習慣を親が先取りしてやってあげたり、子どもの気持ちや要望に振り回され、なんでも叶えてあげようと行動してしまう。それが、子どもへの愛情だと思っている。

5.子どもの失敗を見ていられず、助けることが愛情と思う

年齢に合った子どものかかわりがわからず、見守ったり子どもに任せることなく親が手出し・口出しをして助けてしまう。友達とのかかわりやトラブルなど、子どもに経験させ失敗した場合見ていられない。親が守ることが愛情だと思っている。

ヘリコプターペアレントにならないために

子どもは親とは別の人格であり、いずれは親の元を離れ自立した生活をしていきます。
子どもの成長に大切と言われる「子どもの自立を促すこと」とは、基本的な生活習慣だけではなく、自主的に考え決断し行動したり、問題を解決したり、身内以外のひととも円滑なコミュニケーションを築ける「心の自立」も育てていくことです。

子育てはいつでもやり直しができ、気づいたときから修復ができるので、「今からではもう遅い」ということはありません。

今後の未来を担う子どもを育てるため、また、わが子が幸せで円滑に生きていくためには、親のエゴではなく、適切な子どもとの「距離感」を持った子育てが大切です。
どのようなポイントに気を付けたらよいのでしょうか。

どっちがいい?どう思う?子どもに考えるきっかけをプレゼント

小さなうちなら、今日着る服を選ばせる・朝ごはんのメニューを選ばせるなど、小さな選択からで構いません。
少しずつ大きくなってきて大人に質問してくるようになったら「〇〇ちゃんはどう思ったの?」と聞き、すぐに大人が答えないようにします。こうすることは、自分はどう感じているのかを意識し自分の気持ちを確認でき自分への評価が高まります。その考えを肯定してあげることで、自信がもてるようにもなるでしょう。
その上で大人の考えを正答であると押し付けず「ママ(パパ)はこう思うな。」といち意見として伝えてみましょう。

子どもをよく観察し見守る「習慣」をつけよう

忘れ物や時間の管理、友達とのトラブル、わからないことを先生に聞くなど、子どもが明らかに困っていることについては、年齢が小さいうちは親に困っていることを訴えてくるでしょう。

少し年齢が進むと困っているのに親に言わなくなってくるのが自然な姿です。それは自分で解決方法を模索したり、失敗を重ねたりなど、年齢なりの経験値を重ねている時期だからです。
小さな頃も命に関わること、大人が出ていかなくてならない問題でない限りは、心と目は離さず、黙って見守るようにしましょう。いつも助けていると問題解決能力が育ちにくく、心の成長ができません。

子どもに任せよう!適切な親との「距離感」を子どもが決める

結果を決めてしまいたくなる場面や、ついアドバイスをしてしまいたくなる場面はいくつもあります。また、親が決めた方がスムーズで親自身のストレスが少ないでしょう。 ですが子どもは年齢に合わせて、少しずつ成長しながら親と距離をおいていきます。

子どもの自立や心の成長の期間である「反抗期」もそのひとつです。

自分自身の意思と向き合い、自分で決定する、それがたとえ失敗であっても、自ら学べることがたくさんあり、その子どもがこれから生きていく上での経験値や強みとなるのです。

親との距離感は子どもが無意識的に決めていきます。親は成長を敏感に感じ取り、子どもを信じて見守りましょう。

なんでもしてあげること、アドバイスをすること、失敗する前に手助けすることが、子どもへの本当の愛情ではありません。子どもが自信を持って生きられるよう、しっかりと成長を見極め、見守りましょう。

***

「ヘリコプターペアレント」と呼ばれる親とその育児について、また、チェックリストや子育てについて解説しました。
長い目で見たときの「この子にとっての幸せとは?」そう考えることでおのずと答えが出るはずです。

子どもの幸せを願うのはどんな親もきっと同じはず。今からでも遅くはありません。子育てには失敗や後悔はつきものです。子どもとともに親も成長していきましょう。

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執筆者

炭本まみ

保育士として10年勤務し、今は中学生と小学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。

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