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子育て先進国スウェーデンに学ぶコミュニケーション術

「自分で考える」チャンスをわが子から奪っていませんか?思考力を伸ばす言葉VS芽を摘む言葉

「自分で考える」チャンスをわが子から奪っていませんか?思考力を伸ばす言葉VS芽を摘む言葉
【現地の教育専門家が解説】子育てしやすい国・スウェーデンの教育に子育てのヒントを学ぶこの連載。子どもの思考力を育てる"親子の対等な会話"。しかし、うまくキャッチボールできないようなとき大人はどのような声かけをすればよいのでしょうか。
目次

今の時代に必要な能力として「考える力」ということを耳にすることが多いように思います。主体性を持ち、自分で考え、行動していく、そんな自分軸のしっかりした子になってほしいと思う方は、決して少なくないでしょう。とくに、いろいろな情報にあふれ、選択肢も変化も多い世の中では、なおさらだと思います。

「対話」は考える力と密接に関係しています。

前回の記事「【子どもの思考力を育てる】対話の実践方法を大公開!園から持ち帰った子どもの作品についてどう話しかける?」では中山先生からこのようなコメントがありました。

問うことは、気づくことであり、確かめることであり、深めることにつながります。幼児期から大人に問われる体験を蓄積することは、次第に自分の頭の中で問いを立てることができるようになるのです。まさに「思考力」を伸ばすとても効果的で、日常的な働きかけといえるでしょう!

おやこの「対話」がうまくいかないときは…

しかし、すでにみなさんの中では、子どもが親との対話で得られる力について理解でき、実際にやってみた…なのに、わが子からはぽつりぽつりとしか返ってこない…なんてことが起きていませんか?

そんなときには、ひょっとすると以下のような原因が隠れているかもしれません。

  • 子どもは、大人から否定されることが怖い
  • 子どもは、すでに答えが決まっていると思い込んでいる
  • 子どもは、大人から言われたことをするのが当たり前になっている
  • これらの原因を踏まえた上で、子どもたちの考える力を伸ばすためにスウェーデンで日常的に働きかけていることをご紹介したいと思います。

    子どもの「したい!」に寄り添う

    子どもの「こうしたい!」と思う意欲は、考える力の原動力です。

    自分の欲求や好奇心に「わがまま言わないの」と抑えつけられたり、「忙しいからあとにして」と尋ねてもらえなかったりすると、子どもはその欲求や好奇心にフタを閉めてしまいます。自分の「したい!」がなければ、そのための行動にもつながりません。

    大人でも、一生懸命考えて言ったことを否定されたり、生意気だと笑われたりしたら、もう自分の考えは話したくないと心を閉ざしてしまいますよね。

    考えをシェアしてくれたときは突拍子もないことでもまずは肯定しましょう。「あなたの考えは大切だよ。ちゃんと聞いてるよ。」というメッセージを送ることが大切です。

    たとえば
    「そっかぁ!どうしてそう思うの?」
    「もっと教えてくれる?」
    などは、子どもが自分で考えることに自信を持てる「魔法の言葉」です。

    ときとして子どもは、「したい!」を上手く伝えられなくなり、ついつい行動で示すことがあります。

    たとえば、積み木で一緒に遊びたいという思いを言葉にできず、注意を引こうとして積み木を倒してしまった…などです。こうしたときには、間違えてしまったことを正した上で、その子の隠れた思いを大人が言葉にしてあげてください。

    「一緒に遊びたかったのかな?」
    「あの積み木が欲しかった?」
    などと言葉かけられると、子どもは自分の思いを言葉にしてもらえるとともに、思いを受け止めてもらえている安心感も抱くことができるでしょう。

    教育方法学の専門家・中山芳一先生のひとことメモ

    今回は、子どもの「やりたい!」という意欲から、自分で考える子どもに育てるためのポイントを紹介しました。

    意欲は考える(思考する)ことの原動力、その通りですね。私たちは、考えることを押し付けられるのではなく、考えたいと思うから考えるわけですから…。

    そして、今回のポイントは、単に意欲を大事にしようということだけでなく、その意欲が周囲とかみ合わなかったときの対応についても紹介されていました。

    "自分で出せない言葉"を引き出してあげるのは大人の大切な役割

    私たち教育の専門家は子どもが困らせるような行動をしたとき、「どうしてそんなことをしたの!」と責めるのではなく、「どうしてそうせざるを得なかったのか?」と問うことを大切にしています。つまり、本人も決して困らせようとしたかったのではなく、そこに何か別な思いがあって、やむを得ずやってしまったのではないか、と共感的に理解しようとしているのです。

    田中さんが取り上げたように、私たち大人がかかわることで、子どもへの共感だけでなく、子どもが考える機会をつくり出せていたのです。

    概ね3~4歳頃から芽生えるといわれる頭の中で話す言語(=内的言語)によって、はじめて私たちは思考することができます。このことは、自分で自分と対話する「自己内対話」とも呼ばれているのです。

    「やりたい!」という意欲が周囲とかみ合ったときも、かみ合わなかったときも、子どもの外側へ出せていない言葉を子どもから引き出していく関わりは大変有効な方法だと思います。

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監修者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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執筆者

スウェーデン就学前学校Guldklimpar COO 田中 麻衣

福岡県生まれ。大阪大学外国語学部卒。高校と大学で1年ずつのスウェーデン留学を経て2012年に移住。スウェーデン学童保育の再建をきっかけに、スウェーデンの学校運営に携わるようになる。ストックホルム大学にて校長資格取得。教頭、校長職を経て、現在は幼稚園運営及び特別支援教育専門のコンサル企業に所属し、各地現場の環境・内容・方法等のマネジメント及び人材育成に携わっている。

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