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原坂さん教えて!おやこのお悩み相談室

「テレビはあと10分」「あと5分で帰ろうね」…”約束を守る”と言った子が、実際そのときになると守れないのはどうして?

「テレビはあと10分」「あと5分で帰ろうね」…”約束を守る”と言った子が、実際そのときになると守れないのはどうして?
こどもコンサルタントの原坂一郎さんに、子育ての悩みを相談するこの連載。今回のテーマは「子どもとの約束」。"約束を守る"と宣言しておきながら、実際そのときになると守れなくなってしまうことがあるのはどうして?その理由や、約束を守れるようにする方法を紹介します。
目次

おやこのお悩みvol.7

まわりに迷惑をかけないため、ぐずり防止のために、事前に親子で約束を確認することがよくあります。約束するときはおりこうさんなのに、実際そのときになると守れないことが多く…約束をきちんと守れる子にするにはどうしたらよいのでしょうか?

日常の中で、子どもと約束を交わすことってよくありますよね。
「DVDはあと一回見たら終わりだよ、はいお約束!」
「電車の中では静かにするのよ、わかった?お約束よ!」
そのつど「は~い」と元気よく返事をするから、守ってくれると思ったら…。
その場になると、約束したことも忘れ、わがままを言う子どもの様子に、あきれるやら腹が立つやら…そんな経験は誰にでもあると思います。

でも、子どもは子どもで、約束を守れない深~い事情があるのです。
小さな子どもはどうして約束を守れないのか、守らせるにはどうすればいいのか、子どもに代わってお話ししたいと思います。

その約束、そもそもアンフェアではありませんか?

そもそも、親と子どもが交わす「約束事」は、そのほとんどが「親の希望」であることが多いものです。
子どもにこうしてほしくない、もしくはこうしてほしい、というときに親はそれを「約束」にしようとします。
親と子どもが交わす約束というのはいつも一方的で、子どもの意思や希望はそこになく、そのスタートがそもそもアンフェアであることが多いのです。

子どもは普段から、何か言われたことに対してすぐに「は~い」と言ってしまう傾向があります。
「あと1つだけよ」と言われても「は~い」、「ちょっと待っててね」とお願いをされても「は~い」…その調子で「お約束よ」と言われた時も、何も考えずに「は~い」。

でも大人なら、たとえばご主人から「1週間以内に5キロ痩せるんだよ、約束だよ」と言われても決して「は~い」とは言いませんよね。
そうしようと思えばどんなに大変かということを知っているからです。
でも、未就学の子どもは、そんなときでも「は~い」と安請け合いしてしまうのです。

そうは言っても、日々の中で子どもと約束したいことはあるし、いったん交わした約束は、頑張って守ろうとすることも大切ですよね。
そんなときはどうすればいいかと言うと…。

無理なく守れる約束にして"約束を守る快感"を体験させる

まずは約束の内容です。
約束を守る子どもにするための最初のステップは、「無理なく守れる内容にする」ということ。
たとえば3歳の子どもに、「買い物の途中で『あれ買って』と言わない」というのは難しい約束ですが、「お店ではママのそばにいる」という約束は簡単に守れることなので、まずはそれを約束にします。

そして守れたときはそれをほめる…それを繰り返すと子どもは約束を守ることの喜びを感じ、「約束を守るのもいいものだ」と思うようになっていきます
約束の内容は、子どもの様子や年齢に応じて、少しずつハードなものにしていくといいでしょう。
守れる約束が増えると、親もわが子が約束を守れる子どもになったような気がし、うれしくなりますよ。

そういうことを繰り返していくと、我慢というものができるようになる5歳の頃には、守れる約束がずいぶん増えるようになっているはずです。
最初からハードルの高い約束を交わし、守らなかったと言っては叱っていると、子どもは"約束アレルギー"になってしまいます。

その約束における子どものデメリットもきちんと伝える

また、約束のハードルの高低に関係なく、子どもと約束をする際にしてほしいのは、「その約束を守る際に生じる子どもの不都合を伝える」ということです。

たとえば、先ほどの「買い物途中で『あれ買って』と言わない」を約束にしたいときは、「ほしいものがあっても我慢するということ」「ほしくても買ってもらえないということ」と、その場でやってくる不都合を具体的に伝えておくのです。

公園で「あと5分」という約束をしたいときは、「もっと遊びたくてもおうちに帰る」という、その時に生じる不都合をわかりやすく伝え、心の準備をさせておきます。
事前にイメージさせておくのと、いきなりそういう不都合がやってくるのとでは子どもにとっては大違いで、ずいぶん守りやすくなるのです。

そう聞くと、ずい分面倒なことのように思われるかもしれませんが、それでこそフェアな約束と言えます。
大人はとうてい守れそうにない約束は、先ほどのように最初から交わそうとはしません。でも子どもは、どんなに大変な約束でも、まずは素直に「は~い」と言います。
それだけでも可愛いものですよね。

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執筆者

こどもコンサルタント 原坂 一郎

1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。 Facebook:@IchiroHarasaka
http://harasaka.com/

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