連載
子育て先進国スウェーデンに学ぶコミュニケーション術

【子どもの思考力を育てる】対話の実践方法を大公開!園から持ち帰った子どもの作品についてどう話しかける?

【子どもの思考力を育てる】対話の実践方法を大公開!園から持ち帰った子どもの作品についてどう話しかける?
【現地の教育専門家が解説】子育てしやすい国・スウェーデンの教育に子育てのヒントを学ぶこの連載。子どもの思考力を育てる"親子の対等な会話"は具体的にどのようにしたらいいのか、子どもの作品や写真を使った対話を、親からの質問例を交えながら紹介します。
目次

前回は、子どもとの対話で意識したいことについて考えてみましたが、いざ対話するぞ!と思っても色々意識しすぎるとうまく話せない…なんてこともあるのではないでしょうか。
あくまで正解はない、ということが大前提ですが、取り入れやすい具体例をご紹介します。

おやこの対話のポイントは5つありました。

  1. 子どもの世界を想像しながら話す「この子の世界はどんな世界!?」
  2. 対話のための環境づくり「対話に全集中する!」
  3. 会話のテンポは子どもに合わせる!「テンポを落とし、沈黙は待つ」
  4. 子どもへの問いかけに工夫を!「オープンクエスチョンをうまく使う」
  5. あとは子ども任せで!「興味関心に寄り添う」

このポイントを押さえながら、実践してみましょう。

子どもの作った作品を使って対話を楽しもう!

お迎えの時間に園庭でよく見られる光景でいいなぁと思う親子のやり取りがあります。その日に作った作品を手にパパやママのところへ駆け寄り、「見てみてー!これ作ったの。あげる!」とうれしそうに渡す子。それを受け取り「わー!ありがとう!これは何?どうしてこの色を選んだの?」とそこにあるストーリーに興味深々な親御さん。

何気ない日常の一コマですが、この中に5つのポイントが凝縮されていて素敵だなと思います。そんなことでいいの?毎日してるよ?と思われるかもしれませんが、こうしたやり取りの積み重ねこそとても大切だと思っています。

対話のポイントの1である「この子の世界はどんな世界!?」を知るための質問例をご紹介します。

その作品にわき出た感情を探る

「描いていて(作っていて)どんな気持ちだった?」
「この絵(作品)にはどんな気持ちがあるの?」
「どうしてこれを描こう(作ろう)と思ったの?」
作品を通して子どもが表現しようとしていたことを知ったり、言葉にすることで自分の感情を改めて認識する手助けをしたりしてみてください。

プロセスについて聞く

「難しいなぁって思ったところは?」
「それはどうやって解決したの?」
「どんな道具を使ったの?」
自分がどうやって難しいと思ったことを解決したのかを再認識することは、解決できたという自信につながりますし、解決しなかったのであれば「自分でやってみよう、ってがんばったんだね。お父さん/お母さんも困ったなぁって思うことあるよ。そういう時は本で調べたり、お友達や周りのひとに聞いてみたりするよ」など一言添えることができます。

使った道具の名前やその機能を思い返すことは、単にモノの名前を覚えることはもちろん、自分の使ったテクニックへの理解を深め応用につながります。

ストーリーをふくらませる

「ここにいる人は何をしてるひと?」
「この(作品の)世界にも幼稚園はあるのかな?」
「そういえば、去年の冬にもそういうことしたね。覚えてる?」
見せてくれた作品にある世界について聞くと、とってもおもしろいです。
たとえ作った時には考えていなかったとしても、質問されることでどんどん世界ができていく、なんてこともあります。子どもの想像力って素晴らしいですよね。

以前の体験と関連付けをするのもいいと思います。そのときにできなかったことができるようになっていると自分の成長に気づくいい機会です。
お子さんが新しい挑戦をするか躊躇していることがあれば、やってみようという気持ちのきっかけになるかもしれません。

写真で学びや成長のプロセスを可視化すれば、対話がふくらむ

作品でなくても、園での様子が写真で送られてきたり、ご家庭で何かに取り組んでいる様子を写真に撮っていたりすると思います。それを使って同じように対話することができます。

新たに子どもが何かするところを写真を撮る機会があるのであれば、「取りかかり」「途中経過」「終わり」の3つのシーンを撮影すると、その写真を使ってより対話が深まります。たとえば、動物にふれあう場面なら、最初は怖がっていたのに最後はエサをあげられるまでになった、という学びや成長のプロセスが可視化できます。

私の園でも、そうした写真を子どもたちの目線の高さに掲示しています。子どもたちがそれをじーっと見ているときに上のような質問をして、学びの再認識や思い出す練習をするととてもいい対話になるのでおすすめです。

上にあげたのはあくまでいくつかの例です。「この子の世界はどんな世界!?」の気持ちでたくさん素敵な対話をしてみてください。そしてご自身の世界もお子さんとシェアしていただけたらなと思います。

教育方法学の専門家・中山芳一先生のひとことメモ

子どもと対話する上で大切なことがわかりやすい実践例でした。

とくに注目は「シェアする何かがあると対話しやすい」ということ。
子どもの作品や写真…一緒に何かを見たり、感じたりすることで分かち合える何かがあるとよいですね。これって、意外に身近にあるものではないでしょうか?ついつい見過ごしてしまって、お子さんとシェアするチャンスを逃してしまわないようにしたいですね!

そして、もうひとつ大切なのは「問うこと」
問うことは、気づくことであり、確かめることであり、深めることにつながります。幼児期から大人に問われる体験を蓄積することは、次第に自分の頭の中で問いを立てることができるようになるのです。まさに「思考力」を伸ばすとても効果的で、日常的な働きかけといえるでしょう!
みなさん、早速お子さんとの対話を楽しんでみてくださいね。

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監修者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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執筆者

スウェーデン就学前学校Guldklimpar COO 田中 麻衣

福岡県生まれ。大阪大学外国語学部卒。高校と大学で1年ずつのスウェーデン留学を経て2012年に移住。スウェーデン学童保育の再建をきっかけに、スウェーデンの学校運営に携わるようになる。ストックホルム大学にて校長資格取得。教頭、校長職を経て、現在は幼稚園運営及び特別支援教育専門のコンサル企業に所属し、各地現場の環境・内容・方法等のマネジメント及び人材育成に携わっている。

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