連載
子育て先進国スウェーデンに学ぶコミュニケーション術

【幼児期こそ大切にしたい】日常は体験の連続!「国語が苦手」「算数が嫌い」…は"体験を通した学び"で解決!

【幼児期こそ大切にしたい】日常は体験の連続!「国語が苦手」「算数が嫌い」…は"体験を通した学び"で解決!
子育てしやすい国・スウェーデンの教育に子育てのヒントを学ぶこの連載。今回のテーマは「科目のない世界」。幼児期は純粋な"学び"の楽しさを体験をできる貴重な時期だと語る、ストックホルムで幼児教育に携わる田中麻衣さん。詳しく教えていただきましょう。
目次

前回の記事「『これってバグかも?』着替えや食事シーンで学ぶ【プログラミング教育】!体験学習こそ子どもの最高の武器に」で体験して学ぶことの大切さについてお伝えしました。おうちでミッションカードを使ったアクティビティ、挑戦してみましたか? 

さて、みなさんの中には体験を通した学びについて、まだピンと来られない方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は私がスウェーデンの教育から学んだ「科目のない世界」についてお話したいと思います。

この記事から少しでも”体験を通した学び”へのハードルを下げることができればと願っています。

コップ一杯の水が無数の教科につながっている!

突然ですが…目の前にコップ一杯の水があると思ってください。このコップ一杯の水には、じつはいろんな学びが詰まっています。

「水」に関する本を読んだり、「水」のつく単語を調べたりすればそれは国語
水の量を測ってみれば算数
水がどこからくるのか考えれば理科
コップのガラスはどのようにリサイクルされるのかを知るのは社会
ガラスはいつの時代から使われるようになったのかは歴史
ガラス以外のものを使ってコップを作る!に挑戦すれば図工
複数のコップに水を入れて音を鳴らせば音楽

…などなど、水ひとつのことで、どんな教科内容にもつなげられると思いませんか?

ここまで読んで、「水の量を量ってみれば算数…んっ!それって理科じゃない?あれ、でも算数かな?」と思われた方がいらっしゃったらとてもうれしいです。
体積を求めようとすれば算数だし、重さを求めようとすれば理科となります。

小学校からの教科(科目)とは、結局のところ学校で体系的に教えられるようにつくられたものにしかすぎません。だから、教え手が何を学んでしいと思っているかによって科目が変わるというのがスウェーデンの教育から影響を受けた私の考え方です。

日常は体験の連続!身近で興味のあることから学びの楽しさを伝えよう

ふだん私たちは科目を入り口に話をします。
「国語が苦手だ」や「算数は嫌いだ」という言い方をしますよね。

科目で考えてしまうから、過剰な苦手意識がついてしまうのだと私は思います。音読が得意じゃないだけで国語全体が苦手だと思ってしまい、国語の授業に消極的になり、本当に苦手になるということが起きてしまうのです。
この例のように音読が苦手なお子さんがいたとして、大人にできるアプローチは、少なくとも2つあります。

1.苦手について理解する

音読のどこ(なに)が苦手なのかをできるだけ具体的に理解を!
たとえば、人前で音読するのが不安なのか?サ行の音読が苦手なのか?…など、同じ音読でも苦手なところは違うものです。単に人前が不安なだけなのに、サ行の練習を一生懸命にさせる必要はありませんよね。

2.苦手だから練習する

苦手なところがわかれば、あとは「させる」のではなく「やりたい」を大切に!
たとえば、人前で音読するのが苦手なら、教科書を読ませるのではなく、一緒に料理をしながら「レシピに次なんて書いてある?」と問いかけてレシピを読み上げてもらう…など、本人がやりたいことに音読をくっつけてあげるとよいですね。


幼児期は小学生以降と違って、もともと教科(科目)の考え方が少ない貴重な時期です。
だからこそ、とても純粋な形の学びを自然にできることが就学前教育のおもしろさであり、素晴らしさだと思っています。この貴重な機会に、学ぶことの楽しさをたくさん伝えてあげてください。

そのためにも、お子さんにとって身近なこと、興味のあることを入り口にして学びをサポートしてあげることをおススメします。 好きなキャラクター、好きなお弁当のおかず、よく歌う曲、なんでもいいです。「体験学習」なんておおげさに考えなくても、日常は体験の連続です。

この記事からどんなことでも学びの機会に変えられると感じていただけたらうれしいです。

【中山先生のひとことメモ】体験からの学びには"本来の学びの楽しさ"が詰まっている

幼児期の学びの良さは、田中さんの言葉を借りると…
「幼児期は小学生以降と違って、もともと教科(科目)の考え方が少ない貴重な時期です」この一言に尽きると思っています。

私たちは学ぶことや勉強することを、いつの間にか固く、狭く、窮屈に考えすぎてはいないでしょうか?
教科という分け方、習ったか習ってないかという分け方…これらは仕組みとして決められているだけであって、私たちはもっと柔軟に、広く、自由に学べるはずなのです。本来なら、学ぶことって楽しいはずですもんね!

じつは、そんな風に楽しく学べる時期こそ、幼児の時代にあったのかもしれません。それならば、私たち親や大人こそがもっと楽しんで子どもたちに教えたり、ヒントを出したり、一緒に考えてみたりすればよいのです。これは、どの教科の何年生頃に習うことだ…なんてのはNG!

目の前の折り紙から、遠く先の宇宙についてまで学ぶことができる私たちって、めちゃくちゃ自由だと思いませんか?
そんな学びの自由を楽しむためにも、私たちは体験から学ぶことを大切にしていきたいものです。

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監修者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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執筆者

スウェーデン就学前学校Guldklimpar COO 田中 麻衣

福岡県生まれ。大阪大学外国語学部卒。高校と大学で1年ずつのスウェーデン留学を経て2012年に移住。スウェーデン学童保育の再建をきっかけに、スウェーデンの学校運営に携わるようになる。ストックホルム大学にて校長資格取得。教頭、校長職を経て、現在は幼稚園運営及び特別支援教育専門のコンサル企業に所属し、各地現場の環境・内容・方法等のマネジメント及び人材育成に携わっている。

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