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保育士が教える小学校入学までに身につけたいこと

【小学校入学の不安】知らなかった!園から学校に送る「要録」は何を書いてるもの?親の希望は伝えていいの?元保育士が徹底解説

【小学校入学の不安】知らなかった!園から学校に送る「要録」は何を書いてるもの?親の希望は伝えていいの?元保育士が徹底解説
保育園や幼稚園などへ通う子どもが卒園する際、入学予定の小学校へ子どものことを申し送りする書類が「保育所児童保育要録」や「幼稚園幼児指導要録」。誰が書くの?どんな内容なの?いつ学校に渡すの?など親が抱く疑問に元保育士ライターが回答します。
目次

保育園や幼稚園などへ通う子どもが卒園する際、入学予定の小学校へ子どものことを申し送りする「保育所児童保育要録」(幼稚園なら「幼稚園幼児指導要録」、こども園なら「幼保連携型認定こども園園児指導要録」)。

じつは義務化されている書類なのですが、あまり知られておらず、はじめて聞くという親御さんがほとんどかもしれません。

この要録では、これまでの子どもの成長過程や性格等を、年長児クラスの担任が子ども一人ひとりについて振り返り様式に添って記入していきます。

保育士がふだん見ている子どもの姿から記入するものということですが、保護者の思いや心配事、などは反映してもらえるものなのでしょうか。

「保育所児童保育要録」を作成する意義と保護者にできることを、元保育士のライター炭本まみがご紹介します。

どんな書類なの?

「保育所児童保育要録」・「幼稚園幼児指導要録」・「幼保連携型認定こども園園児指導要録」は、毎年卒園児について園から小学校へ渡されるものです。

読み手である小学校の先生が入学する児童に関する情報を事前に知っておくことで、入学してくる子どもの様子を把握するために活用される記録です。

保育所を統括している厚生労働省では、

”「保育所児童保育要録」とは、就学に際して保育所と小学校(義務教育学校の前期課程及び特別支援学校の小学部を含む。)が子どもに関する情報を共 有し、子どもの育ちを支えるための資料である”

としています。

どんな内容を書くの?

「要録」は、大きく分けて2種類の記入書類があり、年長児の担任が作成・記入します。
「保育所児童保育要録」を例に見てみましょう。自治体によっては所定の書式があったり、厚生労働省でもフォーマットを公開しています。それぞれ、どのような内容を記入するか解説します。

「入所に関する記録」と「保育に関する記録」

入所に関する記録
子どもの名前・保護者名・入所日・就学先・保育園や幼稚園名など基本的な情報を記入するものです。

保育に関する記録
環境・健康・人間関係・言葉・表現の発達の視点をとらえる五領域を通して、保育士がどのような保育を行い、それに対して子どもがどのような成長の過程をたどっていったのかということを記録します。

保育士は、厚生労働省が発行している「保育所保育指針」と、その中にある「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」という基本的な保育のねらいをもとに保育目標やねらいを立てて保育しています。
なお「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、幼稚園・保育園・認定こども園どれも統一されています。

特に年長の1年間、保育士や幼稚園教諭は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識しながら関わり、子どもを観察し発達を促しています。育ってほしい姿は、「ここまで成長発達が到達しているかどうか」を目指すものではなく、あくまでも目安

「保育所児童保育要録」では、子どもの成長が到達しているかを評価するためではなく、記入のために活用するという捉え方をしています。

小学校に伝えたいことを言ってもいいの?

子どもの小学校入学を控え、期待と共に心配や不安を抱えている親御さんも多いかもしれません。園の先生とはこれまで個人懇談などを通して、子どもの成長や心配について情報交換をしながら多くの会話をしてきたはずです。

入学するうえで、保護者として保育士や入学予定の小学校へ伝えておきたいことがある人もいるのではないでしょうか。

「保育所児童保育要録」では、

  • 保護者との信頼関係を基盤にして、保護者の思いを踏まえつつ記載する
  • 保育要録の送付について、入所時や懇談会などを通して保護者に通知する
  • ことも必要としています。

    ですから、伝えておきたいことや学校へ配慮してほしいことがあれば要望として保育士に伝えることは大切なこと。また逆に、伝えてほしくないことがあった場合も同様に保育士へ話しておきましょう。

    親が伝えておくべきこととは?

    子どもが入学に当たり、親御さんがが園の先生に伝えておくといいこととは具体的にどのようなことなのか、子どもの様子や発達、心配の度合にもよって変わってくるので、少し例を挙げてみましょう。

    子どもの成長発達で気になる点、支援してほしいこと

    入学に際してまず不安になるのは、おもに「できないこと」や「支援ほしいこと」になるでしょう。「こんなことくらい」「親の心配のし過ぎかな?」「いうほどのことでもないかも」と、迷うかもしれませんが、なるべく伝えておくと安心です。
    例えば…

    • 自分で着替えができない
    • 先生の指導を聞き逃しやすい
    • 忘れ物が多い
    • 文字が書けない
    • 絵を描くのが苦手
    • 人の目を気にして返事や会話ができない
    • ときどきトイレを失敗する
    • 偏食が多い
    などでも構いません。

    また、苦手なことに関してどのような関わりを持てば子どもがスムーズに生活できるか、どのような声かけや支援をしてほしいかもあわせて伝えておくとよいでしょう。

    子どもの性格上気になっていること、配慮してほしいこと

    親御さんから見れば、気になるところだらけかもしれないわが子。もしかしたら担任の保育士にも小学校の担任にも「大丈夫」と思われているかもしれません。

    それでも気になることは、遠慮なく保育士に伝えておきましょう。 例えば、

    • 乱暴、やんちゃ
    • 口より先に手が出ることがある
    • 大人に対して反抗的
    • 引っ込み思案
    • 自分の気持ちを言えない
    • 場所見知り、人見知りが強い
    • 一人遊びが好き
    • 友達関係を仕切りたがる
    • などです。

      これも保護者としてこれまでどのような関わりをしてきたか、どんな解決方法があったかということと、学校へ配慮してほしいことも併せて伝えておくとよいでしょう。

      子どもの苦手なこと、それに対する対処法

      小学校では、幼稚園や保育園ほど苦手なことに対して個別の対処は難しいもの。苦手なことに対して子ども自身が自分で対処したり、ほかの方法を考える必要も出てきます。

      それでも小学校に伝えておくことで、子どもが苦手な場面での戸惑いをスムーズに理解してもらえることが増えるでしょう。安心して小学校生活を送るためにも、伝えておきたいですね。

      例えば、

      • 牛乳が苦手、偏食
      • 縄跳びや鉄棒など運動面で苦手がある
      • 水に対する恐怖感がある
      • 人前で話すことが苦手
      • など、どんな些細なことでも構いません。 また、無理強いすると暴れる・吐いてしまう、励ましてトライさせてほしいなど、関わり方の注意点も伝えておきましょう。

        アレルギー、障害、持病、投薬など

        アレルギーや持病、障害など、医師の診断のもと、はっきりとしている体のことは、今後も直接学校と情報交換をしていくことになるでしょう。これまでも保育士に伝えてあるはずです。

        それでも、改めて保育士に「小学校へ伝えておいてほしいこと」として伝えておくと良いですね。関わり方や気をつけるべきことは、入学してから学校へ伝えていきましょう。

        子どもの育ちに寄り添う記録だからこそ、保育士と連携しあおう

        「保育所児童保育要録」や「幼稚園児童指導要録」は決して子どもの成績表や成長発達の評価表ではありません。子どものこれからの成長を促すため、また、子どもを少しでも小学校に知っておいてもらうために作成する資料です。

        悪いところ・気になるところだけではなく、小学校の先生がイメージしやすいよう、「〇〇なところがあるが〇〇と対応すればスムーズである」などポジティブな記録物でもあります。

        園で先生たちが捉えていることと、親御さんが思っている子どもの姿や心配事は必ずしも同じとは限りません。子どもの小学校生活がより快適になるために、具体策を併用しながら園の先生に伝え、連携を取っていきたいですね。

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執筆者

炭本まみ

保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。

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