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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

わが子が嘘をついた…とがめる前に親がすべきこととは?教育専門家が語るついていい嘘・悪い嘘

わが子が嘘をついた…とがめる前に親がすべきこととは?教育専門家が語るついていい嘘・悪い嘘
兵庫県西宮市の「森のようちえん さんぽみち」の園長・野澤俊索さんに、子育てで気になるあれこれを綴っていただく連載。今回は、気になる"わが子の嘘"がテーマです。
目次

わが子が嘘をついたとき…親としては少なからずショックをうけるもの。「うそつきはどろぼうのはじまりだよ」と伝えて嘘をつかないように教えているママ・パパもいるかもしれませんね。

また、意図的にごまかすための嘘のほか、幼児は空想の世界に入り事実とは違うことを話し、対応に戸惑うことも。そんなとき、大人はどう対処すればよいのでしょうか。

園舎をもたず、自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」の園長"のんたん"こと野澤俊索さんにお聞きしました。

***

先日、広場で3歳の子と遊んでいると、その子が「えほんもってるよ」といいました。見せてというと、「はい」と言って渡してきたのは一枚の葉っぱでした。
やりとりの中で、本当に絵本を持っていると思ってしまった私は、ええ?!と驚いてしまいました。

また、ある5歳の子が、「うちのかいだんのしたに、わたしのちいさなおへやがあるの」と言ったことがありました。でも、お母さんに聞くとそんなところはないとのこと…。

幼児期は、空想と現実の境目がはっきりしない時期です。やりとりや言葉にも、希望や願望などが混ざって事実とは異なるストーリーになっていくことがあります。

嘘をつくのは成長の証でもある

梅の木がたくさんある広場で遊んでいたときのことです。その梅にはたくさんの実がなっていました。でもこの梅の木はよく手入れされ所有者がいる梅なので、実をとってはいけないよと子どもたちには伝えていました。

みんなめいめいに遊んでいたところ、6歳の子がひとりであたりをキョロキョロ見回した後、ひょいっと梅の実をとってポケットに入れました。

何食わぬ顔で遊びに戻ってしばらくしたとき、「ねえ、何かポケットに入ってるの?」と聞いてみました。最初は何も入っていないと言っていましたが、次第にバツの悪そうな顔をして「これはそこにおちていたんだよ」と言って梅を見せてくれました。

ポケットから出てきた梅の実。バツの悪そうな顔で、本当とは違うことを一生懸命言おうとしている子。怒られるという気持ちと、それを取り繕おうとして考えを巡らしている様子がよくわかります。

「嘘をつく」ということには、相手の気持ちを感じ取ったり、自分の立場を客観的に見たり、論理だてて筋道を構成しようとしたりするといった高度な知恵が要求されます。「嘘をつく」ためにはそれなりの経験と成長が必要なのです。そのため、まずは、「嘘をつけるようになったんだ」と成長の証ととらえてみるとよいでしょう。

その嘘に隠れている心の奥の気持ちをくみ取ろう

「それ、本当に落ちていたの?」と聞くと、その子はしばらく沈黙してから「…とっちゃった」と言いました。「でもやくそくは?」ときくと、「とっちゃだめ」とわかっていました。

「梅、欲しかったんだね」「うん」「欲しい気持ちはよくわかったよ。でも、その梅をとると悲しむ人がいるんだ。だから、今度はやくそくを守るという強い気持ちをもてるといいね」とお話ししました。

事実の反対は虚構ですが、虚構をすべて嘘とは言いません。たとえば、「いないいないばあ」という遊びをしても噓つきではありませんし、絵本も空想の世界であり嘘とは言いません。同じように、子どもの言葉も、事実とは違っていてもそこにどんな気持ちが隠れているかで、対応が変わってきます。

人と人との関係の中で、「嘘」がよくないのは、その嘘が人を傷つけるときです。だましたり、あざむいたりすることは、結果的に人をひどく悲しませます。暴力と同じように、こうした嘘は遊びの中でも止めて、相手の気持ちをしっかりお話する必要があります。

また、事実をごまかしたり、ケンカで一方的にやられたなどと真実を隠そうとしたり、向こうに大蛇がいる!などと相手の気をひこうとして誇張したりする嘘は、自己防衛や、自分を認めてほしいという寂しい気持ちの表れかもしれません。

先ほどの梅の実をとってしまった子。
「ところでその梅、どうしたかったの?」ときくと、「ママのおみやげにしたかった」とのこと。ママを喜ばせたかったんだね、と聞くと「うん」と頷きました。

どんな時でも、頭ごなしに叱らずに、その時の気持ちをまず認めましょう。そして、嘘をついている裏にある気持ちは何なのかを知ろうとすることが大切です。嘘そのものをとがめるより先に、その気持ちに寄り添ってみましょう。

嘘そのものを正しい表現に変えていくのは、こうした心の奥にある気持ちがわかってからでよいのではないでしょうか。大人だからわかるいろんなお話は、それからゆっくりすればいいのです。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは1歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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