親が思うよりずっと大切!幼児の運動あそびは生きる力の基礎をつくるもの

親が思うよりずっと大切!幼児の運動あそびは生きる力の基礎をつくるもの
心や脳の発達とともに、体もぐんと発達する就学前のこの時期。運動というと、足の速さや競技の技術などに目が向きますが、「本当に大切なことはまったく違う」と発育発達学の専門家、中村和彦先生は語ります。
目次

足が速くなってほしい!スポーツ選手に育てたい!なにより運動神経がいい子に育てたい!!…と運動に関しても親の勝手な期待はつきません。

そんな3歳~6歳ごろの幼児の「運動」で本当に大切なのはどんなことなのでしょうか。

また、私たち親がサポートできることはどういうことなのでしょうか。

子どもたちが大好き、われわれ親にもおなじみの「パプリカ」のダンス、「ブンバ・ボーン」の体操の監修もされている発育発達学の専門家・山梨大学の中村和彦先生が、この時期の運動について詳しく教えてくださいました。

幼児が体を動すことで育まれる3つの「生きる力」

子どもにとって、3歳から小学校入学までの時期は、心と体の発達の「基礎作りをする」とても大切な時期です。

運動の発達段階でいうと、「走る」「跳ぶ」「投げる」のような基本的な動きが一通りできるようになる時期になります。ここから、多様な動きや、なめらかできれいな動きができるようになり、徐々に自分の体を自分でうまくコントロールできるようになっていくのです。

文部科学省では、この大切な幼児期の子どもに関わる保育者や保護者に向けて「幼児期運動指針」というものを出しています。

それによると、3歳から6歳の小学校就学前の幼児にについて「様々な遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが大切」とされています。

ポイントは幼児にとっての運動は、楽しく体を動かす遊びが中心であるということ。

この時期におもいっきり体を動かして遊ぶことで、生きるために大切な3つの力がはぐくまれていきます。

体を動かして遊ぶことで発達する3つの力

  1. 認知的な発達
    何かを知る、工夫する力。思考力や判断力、表現力、学びに向かう力など

  2. 情緒や社会性の発達
    コミュニケーション能力。相手を思いやる力、人を慈しむ力など

  3. 体力・運動能力の発達
    動作の習得や運動能力など。表に出てこない体の能力も含む

身体的な側面だけではなく、精神面もふくめた社会性の発達や認知的能力の発達なども一緒に育まれていくんですね。 これらはどれも単独ではなく、相互に関係しながら発達していきます。

そのために必要なことってどんなことなんでしょう…

編集部

子ども自身が続けたいと思うこと。そのために必要なこととは

さて、そのときに、どんな運動を子どもにさせたらいいのでしょう。

…ちなみに、みなさんは、自分自身が何かを始めるとき、どんなことだったら続けられますか?

答えはとってもシンプル。自分が「おもしろい」と思うことではないでしょうか。

気づけばのめりこんで熱中し、やめたくない、またやってみたいと思うことであれば、長く続けられますよね。

それは子どもたちも同じです。

運動には遊びの要素が必要。だから提案しているのは「運動あそび」なんです。
運動のための運動ではなく、あそびながら自然に運動しているということが、この時期とっても大切になります。

その「運動あそび」のキーワードはこの3つです。

おもしろく
ここちよく
みずから

滑り台、ブランコなどの固定遊具や、なわ跳び、ボール遊び、鬼ごっこやパイナップルジャンケン…遊び方は子どもが自分から楽しく遊べるものであれば、何だってよいのです。

子どもが体を動かして遊べる時間や環境が少なくなっているいま、親に必要なのはこの「運動あそび」を積極的にさせてあげるためのサポートなのです。

運動あそびにはいろいろな動きがバランスよく含まれる

昨今、日本の子どもの体力低下が叫ばれて久しくなりました。

体力が低下した原因は2つ。

一つは色々な遊びをしていないので、色々な動きを経験しなくなったこと。二つめは、運動にのめりこんでいないので、そもそもの運動量が少なくなっていることです。

小さいころから習い事をしている子は増えているので、運動している子、運動していない子の二極化も進んでいます。でも運動している子も、特定のスポーツだけというのが多いため体験する動きに偏りがあり、全身のバランスがあまりよくないという結果も出ています。

繰り返しますが、この時期の子どもに大切なのは、動きの「バリエーション」なのです。

例えば、ランニングとなるとただ「前に走る」だけ。

ですが、鬼ごっこであれば、後ろにも横にも「走る」、さらには「止まる」「よける」「つかむ」などいろんな動きが含まれるんですよね。

そう、遊びには、色々な動きが含まれています。こんな風に遊びながらいろんな動きを経験することで、体全体がバランスよく発達していくのです。

ちなみに、昔の子どもたちにはたっぷり外遊びをする時間がありました。 遊んでいる人数によって遊び方をかえたり、特別ルールを設定したりとアレンジしてとことん遊び尽くし、飽きたら次の遊びに行く、ということを繰り返し、結果的にさまざまな動きを経験しながら運動量も確保できていました。

そんな体験が、残念ながら今の子どもたちには少なくなってしまっています。

鉄棒ができなくても全く気にする必要はなし!

もしかしたら、うちの子は鉄棒で逆上がりができない、まだ泳げないから早く教えなくちゃ、お友達より足が遅いから…など気にしている親御さんもいるかもしれませんね。

でも全く気にしなくて大丈夫です!

幼児期の運動は能力をあげる、成果を出すことが目的ではありません!

とくに日本では、何か技能ができること、勝ち負けや記録を出すことを目的にしがちですが、それでは運動することを心から面白いと思えなくなり、結局何を求めているのか全く意味がありません。

諸外国の子どもたちはもっと「おもしろく体を動かす」ことを大切にしていて、すべての子どもが心地よく運動を楽しめるしくみを作っています。

ちなみに、できないと小学校に入学してから困るから…という声もよく聞きますが、現在では小学校の体育での目標は変わってきています。

たとえば「逆上がり」ができるかどうかが評価に直結するのではなく、それをする過程でどのように努力したのか、友達とどう関わってやったか、ということが評価されるようになってきているのです。

以上のように、幼児期は「この能力を身につけさせよう」と思ってはいけません

これができない、と焦る必要もありません
それよりも、熱中して運動あそびができる体験こそが、これからの人生を生き抜く大きな力となります。
そのためにも、運動遊びに夢中になれる時間、空間、仲間を大人が整えてあげるほうが大切なのです。

親としてはどうしても目先のことにとらわれがちですが、 ちょっと安心しました…!

編集部

参考文献:「幼児期運動指針ガイドブック」(文部科学省)

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お話を伺った方

山梨大学 教育学部長・大学院教育学研究科長 中村 和彦

1960年甲府生まれ。筑波大学大学院体育研究科修了。子どもの遊びの重要性、基本的な動きの発達などを研究。文部科学省中央教育審議会専門部会委員。NHKおかあさんといっしょの体操「ブンバ・ボーン」、2020応援ソング「パプリカ」のダンスを監修。

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