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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

失敗を受け入れられない子「どうせできない」「自分には無理」いじけたりクヨクヨしたり…ネガティブ思考にどう接すればいい?

失敗を受け入れられない子「どうせできない」「自分には無理」いじけたりクヨクヨしたり…ネガティブ思考にどう接すればいい?
兵庫県西宮市の「森のようちえん さんぽみち」の園長・野澤俊索さんに、幼児期の子育てで気になるあれこれを綴っていただく連載。今回は、子どもが前向きにいろいろなことに挑戦できるための親のサポートについて。
目次

わが子にはいろいろことに前向きに挑戦してもらいと思っていても、「できない」「無理」などと言って投げ出してしまうことがあると、親としては気になってしまうもの。
そんなとき、どうわが子に寄り添えばよいのでしょうか。

「森のようちえん さんぽみち」の園長"のんたん"こと野澤俊索さんにお聞きしました。

***

私が園長をしている「森のようちえん さんぽみち」では、子どもたちと畑仕事をすることがあります。

年少のうちは、畝(うね)を踏まないように歩くことが難しくて、転んで野菜の芽に手をついて折ってしまったり、種まきでうまく種をつかめなくてこぼしてしまったり…じょうろで水やりをすると体中がびしょ濡れになり、そのまま泥遊びに変わったりすることもあります。

それでも畑仕事をやりたい意欲にあふれているので、年少児なりに頑張っているのですが、畑は崩れていくばかり。でも、しばらくお仕事をしたら、いいところで切り上げて「ありがとう」と伝えて終わります。

ところが、年長になると、畝の間をしっかりと歩き、はさみを上手に使ってきゅうりやナスを収穫できるようになります。水やりも種まきもうまくできるように!

はじめからうまくできる子はいません。小さい時から繰り返してきた経験が、時間を経て成長の実感となって表れるのです。

「正しくできること」が重要ではない

子どもは本来、自分でやろうとする意欲を持っています。手足を動かして、感覚を使い、神経を刺激して脳の発達を促そうとします。それは子どもが成長しようとする本能的な行動です。

自分の感覚を使って実際に行い、うまくできないことを繰り返して、どうやったらできるかを習得していきます。それぞれの子どもの感覚は違うものなので、人と比べることでもないし、誰かが教えられることでもありません。

「うまくできないことを繰り返しているうちに、できるようになっていく」ことは、人の成長の本質を含んでいると思います。これは人間関係にも同じことがいえるでしょう。心も体も、うまくできないことを何度も繰り返すことで、より豊かに細やかに動くようになっていくのです。

大人の目で見たとき、子どもがうまくいかないことを「失敗」と捉えるか、「チャレンジ」と捉えるか。それが子どもの成長にとって大きな分岐点になるように思います。

大人は「正しさ」を求めてしまいがちですが、子どもにとっては試してみることの方が重要です。

たとえば、子どもが自分でズボンをはくと、前後反対になってしまうことがあります。でも、子どもにとっては反対であるかどうかよりも、自分でできたかどうかが大事。「自分ではけたね」というと、子どもはきっと満足そうな顔をするでしょう。前後の間違いはその後、一緒にはき直せばいいことです。

その時もしも、「できてないよ」と言われたらどうでしょうか。「まだできないからやめて」といわれたらどうでしょうか。 それは、やろうとする子どもの気持ちに、水をかけて消してしまうようなことになってしまいます。子どもにとっては、たとえ前後が逆でも、ズボンをはくということは自分でできたのですから。

子どもの失敗を受け止める余地をつくっておきたい

子どもたちはうまくできないことを繰り返して成長していきます。その「失敗」を受け止める余地を大人の心につくっておくことが肝心です。
その「失敗」にみえる行為は、ミスではなくてチャレンジなのです。チャレンジの結果はどうであれ、一生懸命やってみたということには変わりないはず。いつかきっとできるようになると、子どもたちのことを信じて見守りたいと思います。

チャレンジを繰り返すことを認められた子どもたちは意欲を失わずに、一度うまくいかなくてもまた次のチャレンジをし続けるでしょう。

子どもが今の時点で物事に前向きに取り組めないときは、まず、安心して「失敗」できる環境かどうかや、「失敗」をチャレンジとして受け止める心の準備ができているかを確認してみてください。

そして、子どもの話をよく聞いてあげてください。できても、できなくても、あなたのままでもう十分だという気持ちをもって接しましょう。
そして、ときにはうまくいかないことを手伝ってあげたり、一緒にやってみたりすることも必要です。なぜなら、フォローしてもらうことで子どもたちは安心感と信頼感を抱き、今度は自分でやってみようという意欲をもつことができるようになるからです。

自分の力でやることはとても大事なことですが、そのためにはまず大人に対しての安心感や信頼感があることが先決です。安心してチャレンジできる環境を、子どもの心の中につくってあげましょう。

子どもたちは自分にしてもらったことを人に返せるようになります。
年少の時に年長児にやさしくしてもらった子は、自分が大きくなった時、必ず小さい子にやさしくするようになります。

つまり、子どもが自分の力を信じるためには、まず自分を信じてもらう必要があるのです。信じてもらった子どもは、人を信じることができるようになります。そして、信じてもらった自分のことも信じることができるようになるのです。

いつか花咲くその日まで、やさしい目で子どもを信じて見守りましょう。そして、手をつないでゆっくりおさんぽするように、側に寄り添い、付き合っていくといいと思います。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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