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管理栄養士が教える・幼児食と食育のきほん

幼児でも油の摂りすぎは【隠れ肥満】の原因に!成長に不可欠な「脂質」を正しくおいしく食事に取り入れるコツ

幼児でも油の摂りすぎは【隠れ肥満】の原因に!成長に不可欠な「脂質」を正しくおいしく食事に取り入れるコツ
【管理栄養士が解説】幼児の成長に必要な栄養素「脂質」。ただし現代の食生活では子どもの「肥満」「隠れ肥満」の原因にも。脂質とは何か、どのくらいどのように取り入れればいいのかをわかりやすく解説します。
目次

脂質ときくと「太る」「体に悪い」イメージを持つ人も多いかもしれませんが、脂質ももちろん体にとって必要な栄養素です。いっぽう現代の食生活では、やはり取り入れ方には子どもであっても注意が必要です。

脂質とはなにか、どのくらいとればいいのか、気をつける点などについて管理栄養士の尾花友理さんが詳しく教えてくれました。

「脂質」ってなあに?子どもに必要不可欠な理由とは?

脂質とは、糖質・たんぱく質と並んで、人間にとって最も重要な「三大栄養素」のひとつです。糖質・たんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーになるのに対し、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーになることからも、脂質は最も効率のよいエネルギー源といえます。

体の中に入った脂質はエネルギー源になるほか、細胞膜やホルモンの合成に関わったり、脳の神経伝達にも重要な役割をします。体を構成する細胞の数が増加し、細胞自体も大きくなる幼児期は細胞膜の構成成分である脂質をきちんと摂取することが重要です。

不足すると発育の妨げとなったり、疲れやすくなったり、体温を保ちにくくなったりします。

脂質の種類

脂質には大きくわけて、常温で固形の飽和脂肪酸と、常温で液体の不飽和脂肪酸があります。 飽和脂肪酸は肉類やバター、生クリームなどに、不飽和脂肪酸は魚類や植物性の油(オリーブオイルやごま油)、ナッツやアボカドなどにそれぞれ多く含まれます。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸の過剰摂取は、血液中の LDL(悪玉)コレステロール を増加させ、動脈硬化や心筋梗塞など生活習慣病のリスクが高まるといわれています。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸には、さらにオメガ3(n-3)系脂肪酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸などの種類があります。体にいい油として耳にしたことがある人も多いかもしれませんね。

オメガ3(n-3)系脂肪酸はえごま油に含まれるα-リノレン酸や、青魚(鯖やいわしなど)に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などがあります。

オメガ6(n-6)系脂肪酸はコーン油、大豆油などに含まれるリノール酸があります。コレステロールや血圧を下げる効果が期待できると言われています。

オメガ3(n-3)系脂肪酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸ともに体内で作ることができないため、食事での摂取が必要な必須脂肪酸です。中性脂肪の減少に効果が期待できると言われています。

3,4,5歳の子どもたちが1日に必要な「脂質」の量とは?

厚生労働省の食事摂取基準によると、3歳〜5歳の1日に必要なカロリーは男児で1,300kcal、 女児で1,250kcal。総摂取カロリーの20~30%、つまり男児で260kcal〜390kcal、女児で250kcal〜375kcalを脂質で補うのが理想とされています。

さらに脂質の中で、上記で紹介した飽和脂肪酸、オメガ3(n-3)系脂肪酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸の割合が設定されています。

飽和脂肪酸は総摂取カロリ−の10%以下にすること。不飽和脂肪酸のn-6系脂肪酸は1日6g、n-3系脂肪酸は男児で1.1g女児1.0gを摂取することとされています。

「目に見えない脂質」に注意が必要

…とここまでちょっと脂質の割合など詳しい話をしましたが、こまかいことを気にする必要はありません。

現代の子どもの食事において、とにかく気をつけたいのは飽和脂肪酸の摂りすぎです。

食生活の欧米化や、肉類の摂取量が増えたことから、いまどの年齢層も日本人は飽和脂肪酸の摂取量が増加傾向にあります。

大人の場合、健康診断でLDLコレステロールや中性脂肪が高いなどの結果を見て、気をつけなきゃと意識することができますが、幼児は健康診断する機会もなく、「成長期だから」とつい肉類の食べ過ぎも大目に見てしまいがち。でも油断はできません。

体は痩せているのにじつは脂質は摂りすぎている隠れ肥満なんてことも。また、幼児期の食生活が大人になっても影響を及ぼすとも言われています。

飽和脂肪酸をとりすぎないためにも、バターや生クリームの摂取や脂身の多い肉(バラやひき肉など)の食べ過ぎにはくれぐれも注意しましょう。 特にお肉の場合、脂身が多い部位のほうが柔らかく、子どもも食べやすいため、この時期はつい料理に使用しがち。その際は、焼いて出てきた油分はキッチンペーパーなどでしっかり吸収するなど、ちょっとした工夫をするとよいでしょう。

また炒めたり揚げたりなど、調理中に使う油にばかり目がいってしまいますが、見落としがちなのが、たとえばケーキやスナック菓子、ファストフード、カップラーメンなどに含まれる目に見えない油。

まずはスナック菓子からおせんべいに、ケーキやチョコレートから和菓子や果物、芋類などおやつを変えるところからはじめてみましょう。

さらに、比較的油の使用量が少ない和食中心に切り替える、脂質の吸収を抑制してくれる野菜や海藻、豆類などを食事に摂り入れるなども効果的。

ぜひうちの子の好き嫌いや食のスタイルに合わせて、ムリせずできることから始めてみてくださいね。

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執筆者

管理栄養士・料理研究家 尾花 友理

給食委託会社において産業給食、保育園給食などの献立作成及び給食管理、栄養相談などを経験。料理研究家のアシスタントを経て、大手レシピサイト運営会社にてレシピ開発や動画撮影に従事後、独立。管理栄養士としての豊富な知識とリアルな生活者の気持ちや暮らしに寄り添った、取り入れやすい栄養アドバイスやレシピに定評がある。

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