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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

「キレない子ども」に育てるために。気持ちをコントロールする力をつけるために幼児期に体験させたいこととは?

「キレない子ども」に育てるために。気持ちをコントロールする力をつけるために幼児期に体験させたいこととは?
「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて自然保育でのエピソードを交えて綴っていただく連載。今回は前回に続いて子どもの「気持ちの切り替え」「感情コントロール」について。
目次

前回の記事「テレビ、ゲーム、遊び、おやつ…やめなきゃいけないときにぐっと我慢できる子に育てるには?」では、幼児期の子どもたちに終わりの見通しをつけて約束し、毅然とした態度で接する大切さを「森のようちえん さんぽみち」の園長、野澤俊索さんに教えていただきました。

今回は具体的なエピソードを元に、幼児期の「気持ちのコントロール」について、さらに伺っていきます。

***

田んぼのあぜ道をお散歩していた時のこと。5歳の女の子が四つ葉のクローバーを見つけました。

みんなで「いいねえ」と言って見ていたら、別の子も偶然見つけてうれしそう。
それを見ていたまた別の女の子が、「わたしもほしい!」と言って探すのですが、今度は見つからず。「ない、ない…」と言って探すのですが、そうそううまく見つかりません。しまいに泣き出してしまいました。

自然の中では、思い通りにいかないことがたくさんあります。暑い寒いといってもエアコンはありませんし、雨や風が嫌だといってもコントロールすることはできません。捕まえたい虫はそううまく見つからないし、積み上げる砂山も崩れやすいし、リースを編もうと思ってもうまくいかなかったりします。遊びも生活も、思い通りにいかないことがたくさんです。

”思い通りにいかない経験”を重ね、感情をコントロールできるようになっていく

さて、人間の脳には感情をコントロールする前頭前野(ぜんとうぜんや)というところがあります。幼児は脳が発達途中にあるため、感情のコントロールが未熟です。

何度も何度も脳の神経回路を使うことで、脳の部位が発達し、感情のコントロールもできるようになっていきます

子どもは赤ちゃんの時から、手足の動かし方なども、そうやって繰り返して獲得してきました。そしてより複雑な感覚、感情といった部分を成長させていくのがこの時期です。人間の脳の90%が6歳までに完成するという研究があります。そのため、幼児期にたくさんの感覚刺激が繰り返しあることが大切です。

「キレやすい子ども」という問題をご存知でしょうか。感情のコントロールが未熟なまま大きくなると、衝動を抑えることが難しくなってしまいます。

そのため幼児期において感情のコントロールを司る脳の前頭前野の発達が重要になってきます。前頭前野は「思い通りにいかない経験」をしている時に活発に動くことが知られています。
思い通りにいかない経験を繰り返すことで前頭前野が活発に動き、成長していきます。そしてしだいに、感情のコントロールが上手にできるようになるのです。

幼児期は感情のコントロールがまだ上手くできない時期ですから、かんしゃくを起こしてしまうこともよくあります。泣くことや怒ることはネガティブなことではなく、成長にとって大切なことなのです。それを素直に繰り返すうちに、感情のコントロールができるようになっていくのですね。

自然と遊ぶことで脳が活発に動き人間性を成長させる

その前頭前野の潤滑油ともいえるのがセロトニンという物質です。
これは「しあわせホルモン」などと呼ばれ、情緒を安定させ心の落ち着きをもたらします。このセロトニンは日光に当たることや運動をすることで活発に分泌されることが知られています。

外に出るだけでも、感覚への刺激は多様になります。そして自然からの刺激はより柔らかく、より多様です。

目に飛び込むものや、聞こえてくるもの、嗅ぐもの、肌に触れるもの。お日さまを浴びてお散歩をすることで、こんな感覚刺激がたくさん得られます。

外に出ること、そして自然と遊ぶことは、子どもたちの脳を活発に動かし、人間性を成長させる糧となっているのですね。

さて、四つ葉のクローバーを探して泣いていたあの子はどうなったでしょうか。

みんなからも「もういくよと」言われても、泣きながら座り込んで一生懸命探していますが、やっぱり見つかりませんでした。みんなに言われてしぶしぶ、探したい気持ちをぐっとこらえて、涙を流して出発しました。

また別の日。同じところへおさんぽに来た子どもたち。やっぱり見つからない四つ葉のクローバー。今日も涙を流しながら歩き始めたその時です。

「あった…」と、その手の中には小さな四つ葉が。
その子は泣き顔が驚いたような顔に変わって、恥ずかしそうにしていました。

私は、「きっと、ぐっと我慢したことをちゃんと見ていてくれたんだね。そして探すのをあきらめなかったその気持ちが、届いたんじゃないかな。」とみんなにお話をしました。

思い通りにいかなかったときに何とか気持ちに折り合いをつけていく経験は、辛くて涙に変わることもあります。でもそんな経験が実を結び、いつか花咲くときが来るのだと思います。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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