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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

話しかけても遊びに夢中で気付かない…そのときわが子に何が起こっているの?

話しかけても遊びに夢中で気付かない…そのときわが子に何が起こっているの?
「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて自然保育でのエピソードを交えて綴っていただく連載。前回に続き、今回も子どもの"集中"について。「没頭してまわりが目に入らない」フロー状態とは子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。
目次

前回の記事「新しいおもちゃを与えてもすぐに飽きる…あちこちへふらふら…【気が散りがちなわが子】に不安を抱えていたら」では、子どもがすぐに気が散ったり、飽きてしまう理由を紹介しました。

子どもの遊びの原動力は「おもしろい」ということ。興味は成長によっても、その日の気分によっても変わっていくもので、そんな中で自分の「おもしろい」に出合えたらじっくり時間をかけて取り組んでいくものだということがわかりました。

今回は「おもしろい」を見つけた子どもが遊びに没頭する状態について、「森のようちえん さんぽみち」の園長、野澤俊索さんにくわしく伺っていきます。

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雨降りが続き、水たまりができると飛び込んでみたくなるのが子どもたち。ピシャッとはねる水しぶきやその音を聞くとどんどん楽しくなっていきます。そのうち泥をすくってお団子にして並べたり、大きくしてつぶしてはまた作ったりし始め、いつまでも遊んでいます。

子どもたちは同じ遊びを飽きることなく繰り返していることがよくあります。実は子どもたちは"今成長しかかっているところ"を使って遊ぶことで、さまざまな運動機能を獲得しているのです。

成長は喜びですから、子どもはそんな成長につながる遊びを好みます。脳の発達を見れば、五感への刺激によって複雑な神経回路の発達が促されています。そして何度も同じ刺激が通ることによってその発達が定着していきます。

つまり幼児期は全身を使った運動を遊びの基本にすることで、こうした育ちの欲求に応えることができる時期なのです。

遊びに没頭する"フロー状態"を経て成長する

体を動かし、十分な刺激を得て、その日の「おもしろい」を見つけられた子どもは、それにじっくりと取り組み、没頭して遊ぶようになります。そうなると話しかけても気づかないこともあります。

こういう状態を「フロー状態」と呼びます。遊びに没頭してフローの時間を十分にとった後、次の遊びに行くということを繰り返すことで子どもたちは成長していくのです。

フロー状態はすぐにもたらされるものではなく、運動と刺激の探索行動のあとにたどり着くものです。その探索には子どもの欲求に合わせて、ゆっくりと時間をかけるところです。

集中力は体や心を十分動かした後にもたらさせるもの

「森のようちえん さんぽみち」という私の園では、午前中にお散歩をし、午後は森遊びをします。森遊びの様子を見に来ると子どもたちがずいぶん落ち着いていることに気づきます。

「想像と違った」とか「もっとアクティブに遊んでいるのでは」などと言われることもあります。こうした”静”の遊びが展開できるのは、その裏で”動”の時間が十分に確保されているからです。子どもの集中力は、あっちこっちへ体や心を十分に動かした動的な時間の結果としてもたらされるものなのです。

ある日、落ち葉を大切なタカラモノとしていっぱい集めている子がいました。
最初は木の枝にひとつずつ刺して楽しんでいました。だんだん、葉っぱを枝に刺すことに夢中になり、いつの間にか枝いっぱいにたくさんの葉っぱを差し込みました。そして得意そうに笑ってその枝を持って帰りました。周りにいた子どもたちは、「すごい!いいなあ!」とせん望の眼差しでした。

フロー状態で一人遊びに没頭することができる子どもは、成長してお互いに協調する遊びに移行した後も、難しいことを諦めないで創意工夫しながら取り組んだり、自分の思いを何とか相手に伝えようとしたりする姿勢がみられます。
友だちと"一緒に遊ぶ"という行為の根本は、小さい時の一人遊びで培われていくものなのだと思います。

欲求のままに遊びに没頭することが成長につながっていく

子どもの興味のスケールは、大人の思いをはるかに超えています。そして子どもは"自分で考えたい"と思っています。自分の裁量で自由に遊ぶと、与えられた遊びよりもよっぽど面白くなるからです。

それに応えるだけのおもちゃを用意するのは至難の業です。しかし自然の中には、子どもたちの無限の興味に応えられる無限のものがあふれています。
自然物は一つとして同じものがなく、決まった遊び方もありません。それをどう使ってどう遊ぶかは子どもたちに委ねられ、その遊びは完全に自由なのです。

この世界を"おもちゃ"にして遊ぶようにできている子どもたち。
子どもたちは一つのことにとらわれないという特徴を使って、いつも今日の「おもしろい」を探しています。

そしてようやく見つけた「おもしろい」には、とことん没頭して遊び込む力をもっています。
また、その遊びはひとつのやり方にとらわれず、創造と破壊を繰り返して、新しい遊びへとどんどん変化していきます。自分の欲求のままに遊び、一見意味のないような繰り返しをしたり、没頭したりすることが、子どもたちの成長にしっかりとつながっているのです。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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