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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

「ごめんなさい」がなかなか言えないわが子。ついイライラしてしまうけど…謝罪よりももっと大切なことが実はあった!

「ごめんなさい」がなかなか言えないわが子。ついイライラしてしまうけど…謝罪よりももっと大切なことが実はあった!
園舎を持たず森での自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて綴っていただく連載。今回のテーマは子ども同士のケンカと仲直り、そして「ごめんなさい」という謝罪の言葉について。
目次

いけないことをしたとき、お友だちとケンカをしたとき…子どもに「ごめんなさい」を言わせて終わりにする、という場面は多いのではないでしょうか。

つい大人は、子どもが「ごめんなさい」の言葉が言えるかどうか(=反省しているかどうか)に価値を置きがちで、わが子が「ごめんなさい」と謝れないことがあるとついつい気になってしまうもの。

でも、「森のようちえん さんぽみち」園長の野澤俊索さんによると、謝罪の言葉を言えるかどうかよりも大切なことがあるといいます。

くわしく教えていただきましょう。

***

「森のようちえん」のある日、仲のいい4歳の女の子二人が並んでお弁当を食べていました。そのうち一人が食べ終わり、お片付けを始めようとしたときのことです。

その子はお弁当を食べていた自分のシートと隣の子のシートが重なっていることに気が付きました。そこで「わたしのシートにのらないで」と伝えたところ、「のってない」という返事が。そして「のらないで!」「のってない!」「どいて!」「いや!」というやり取りがどんどんエスカレートしていき、シートに土をかけ合うまでに。

そして最後には二人ともぷんぷん怒って「もう遊ばない!」「絶対あそばない!」とケンカ別れになってしまいました。でも、その最後に「もう絶対あそばない!たまーにしか遊ばないからね!」「ふんだ!いいよ!」と言い合う二人を見て、なんだかホッとしました。

子どもはケンカで自己表現力やコミュニケーション力を育む

ケンカをするということは、それだけ相手に安心しているということでもあります。自分の気持ちを安心して出せる相手だから、言いたいことを言えるし、そうやってケンカしてもいなくならないと信じています。それほどお互いの仲が深いと言えるのです。

まるできょうだいのようにケンカができる相手がいるということは、子どもたちの自己表現やコミュニケーションの力を育むのにとてもいいことだと思います。

さて、先ほどの二人が落ち着いた時に「どうして怒っていたの?」と聞いてみました。一人は「おかたづけしたいのにシートがのってるから、できなかったの」と言いました。もう一人は「おべんとうが、まだおわってないのに、どいてっていうの」と言います。

言葉がまだまだ未熟な子どもたちは、自分の思いを相手にうまく伝えることができません。そこでお互いの気持ちを聞きあうことで「重なったシートを外したかった」ということが分かりました。

こうして二人はまた仲良しになって遊びに行くのでした。

「ごめんなさい」は相手の気持ちを理解したその先にある言葉

木の棒がひとに当たることもあります。「たたいた!」と泣いてケンカになったりします。

でも、よく聞くと「あの、きのみをとりたかったの」とか、「このえだ、ふったら、おとがするの」とかそれぞれに理由があることがわかります。

「でも、それが顔に当たってしまったみたいだよ?知ってた?」と聞くと、子どもたちは大抵「え?」という驚いた顔をします。そこで初めて、だから怒ってるんだ、だから泣いてるんだということが分かります。

子どもたちにはそれぞれ"したいこと"があって、それがお互いにぶつかり合ってしまうことがあります。だから、どんな時でもまず、子どもたちが"今どうしたかったのか"という気持ちを聞いてみるのがいいと思います。

その時の気持ちは、きっとどれも子どもらしくていいものでしょう。そしてお互いに相手の気持ちを聞くことで、ひとの気持ちが自分と違うことが分かります。

そしてもう一つ大切なことは、その結果、誰かが痛い思いをしたり、傷ついたり、嫌な気持ちになっていないかということです。もし、そういうことが分かったら、それは「自分のしたいこと」とは別のことのはずです。

どんな人も、他人に危害を与えることや人の自由を奪うことは許されません。それは、はっきりと子どもにも伝えるべきことです。

お互いの気持ちを聞き合うことで、相手がいま悲しいんだとか、怒っているんだとかいうことが分かるようになると思います。
そして、自分のせいでそうなっていることが分かったとき、"しまった"という気持ちを伝える言葉が「ごめんなさい」なのです。

しかし子どもたちは、言葉で気持ちを伝えることがまだまだ未熟です。ごめんなさいと言うことよりもまず、自分の気持ちや相手の気持ちを知ることが大切です。

そのために私たち大人は、子どもたちの「今、したいこと」を認めてその気持ちに寄り添うことが何より大切なんだと私は思うのです。

それがぶつかって上手くいかない時は、どうやったらできるかを一緒に考えると良いと思います。みんなのいるところで木の枝を振り回せないなら、広いところへ行けばいいのです。

また、自分のしたことが人に危害を加えるようなことがあったら、その時に相手がどんな気持ちになっているのかを感じることが大切です。

自分の気持ちを認めて寄り添ってもらった経験のある子どもたちは、後に必ず、ひとの気持ちを感じることができるようになっていきます

そして「ごめんなさい」という言葉での伝達は、その後についてくるものなのです。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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