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のんたんせんせいの自然エッセイ

子どもの忍耐力、感情コントロール力を育むには?"自ら学び育つ"ために大人ができること

子どもの忍耐力、感情コントロール力を育むには?"自ら学び育つ"ために大人ができること
園舎をもたず園児たちが毎日森に通う自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんが綴る自然エッセイ。今回は野澤さんの子ども観について。
目次

冷たい北風が吹き、木々の葉も落ちて、冬がやってきました。
風の音や空の色、肌に触れる空気の感触にも、冬を感じます。

"アウトドア"とは、お家のドアの外のこと。自然は家から一歩外に出たところに既にある、身近なものです。
子どもたちはこうした自然を感じ取る力に長けています。
体全体を一つの感覚器のようにして自然を感受し、自然の中に溶け込んでいくことができます。なぜなら、子どもたちは自然そのものの存在だからです。

社会性、感情コントロール、忍耐…"自ら育つ力"が自然の中で発揮される

ある日、お母さんのお腹の中に小さな一つの細胞が生まれました。そこから細胞分裂を繰り返してやがて人間の形になっていきます。小さなお魚が泳いでいるような感覚から、手足が分かるようになって、しっぽが消えていきます。その間の、子どもの姿の変化はまるで進化の過程をたどっているかのようです。

お腹の中から外の世界に出た日、子どもは初めて光につつまれます。初めて触れる外の空気を胸いっぱいに吸い込んで、声をあげて泣きます。この世界のあらゆる初めてに、こんにちは。これから出会うたくさんのものに驚き、感じ、心動かす人生の始まりです。

子どものいのちは、お母さんのお腹の自然の営みから生まれてきました。この世界でその命をより輝かせ、子どもたちを育んでいく"羊水"のような環境は、やっぱり自然です。母という自然から、母なる自然へと子どもたちは育ちの場を移していきます。

自然の中にいる子どもたちを見ていると、そのいのちの美しさを感じます。

ゆったりと穏やかに遊びに没頭している姿は、まるで小鳥がそこにいるかのように自然です。興味をもったことに向き合っている目は好奇心に満ちあふれて輝いています。自分のやりたいことを精いっぱいやっている顔は充実感に包まれています。

子ども同士が遊んでいると、そこには自然の営みの中にいるような必然と混沌が現れます。そして子どもたちは自然の”先生たち”がそうしているように互いに調和したいと願い、失敗を繰り返しながらやがて自らそこにたどり着くよう努力します

こうした社会性は子どもたちの主体性を基にしています。

また、お互いの調和のためには自分の感情をコントロールすることも大切です。

思い通りにならない自然を遊び道具にすることは子どもたちに忍耐を求めてきます。
小さな手指を何とか使ってつるを編んでリースにするまでには長い時間がかかります。それを夢中でしている子どもたちの真剣なまなざしは、忍耐を前向きな楽しみとして捉えさせます

これらは皆、非認知能力と呼ばれる力です。

子どもたちの自然性を考えると、非認知能力とは本来、生きていく過程で身につく自然な力であることがわかります。

自然と共に生活する中では厳しさも経験します。

野外生活を共にすると、お互いに自立しながら協調する人間性が育まれ、多様性を認め合い共存して生きる姿勢を生みます。 それは子どもたちが大きくなった時、この世界に平和をもたらす力となるでしょう。

また自然の中では、生きることと死ぬことは繋がっていてどちらにも意味があります。 生き物は食べられたり分解されたりして、誰かのいのちに変わります。ひとは死を悲しみ、生を喜ぶことで心の中に相手を宿します。こうして私たちのいのちも、お互いのいのちに変わっているのだと思います。

子どもたちは自然そのものの存在です。

そして子どもたちが本来持つ“自ら育つ力”は、自然の中で発揮されます。
その子がその子らしくまっすぐに大きくなるために、その心の根っこをはりめぐらせる大地は、自然の中にあるのです。

だから私は、子どもたちを自然の中に、そして子どもたちの社会の中におき、側でゆっくりと支え見守りたいと思います。 子どもたちはその環境の中で、生きていくために大切なことを自ら学び育つのです。


***

次回のお話は、「リスクマネジメント」がテーマ。
自然保育での、大人の"正しい関わり"について教えていただきましょう。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは1歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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