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のんたんせんせいの自然エッセイ

「そっと見守る…」子どもが安心して"冒険"するために、できそうでなかなかできない大人の関わり方

「そっと見守る…」子どもが安心して"冒険"するために、できそうでなかなかできない大人の関わり方
園舎をもたず園児たちが毎日森に通う自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんが綴る自然エッセイ。今回は自然保育におけるリスク管理についてお話します。
目次

リスクをコントロールしながら子どもたちの"冒険"をそっと見守る

子どもたちの成長のために、ある程度の危険を承知で子どもたちの自由にさせることがあります。木登りや崖滑りなどの冒険遊びは、ある程度の危険をはらみます。その危険が気持ちを揺らし、葛藤を生み成長につながります
このように子どもたちの行為によって生じる危険をリスクと呼びます。

もちろん失敗することもあります。やりたいことをしてもいつもうまくいくとは限りません。そのため、事故や大けがにならないように私たちはリスクをコントロールします。

またその時に子どもの失敗を笑わないとか、うまくいかない時に相談にのるとか、私たちが子どもたちの小さな”心の安全”を守ることが、安心した冒険につながります

砂山が崩れたり、つくったリースがぐちゃぐちゃになったり。
冒険遊びだけではなく、自然遊びには失敗がつきものです。

そういう意味では人との関わりもドキドキする”心の冒険”になることがあります。ケンカして自分の気持ちを伝えることは、子どもたちにとって大冒険なのかもしれません。

そんな心の冒険の、心の安全を守るように、そっと見守ることが大切な大人の役目です。リスクは子どもたちの成長の糧となることも忘れてはいけません。

一方、子どもたちの行為に関わらず、既に存在している危険があります。それを「ハザード」と呼びます。
がけ崩れ、深い川、雷、危険な動植物など、ハザードは命にも関わる事故の危険があります。ハザードを事前に把握し、場所を変えたり除去したり、約束を子どもたちと決めたりすることで安全な行動範囲を作るのも保育者の努めです。

子どもたちが自分たちの裁量で振る舞い、遊びを展開する自由を保障するには、こうしたリスクとハザードの視点が欠かせません。

子どもの"自由を見守ること"と"しっかり関わること"はセット

大きな斜面で崖滑りをして遊んでいた時のこと。子どもたちは自由気ままに登っては滑り降りを繰り返していました。

その時、崖の上にいた子が下に向かって大きな石を転がしました。どんな風に転がるのだろうという好奇心にかられてのことと思います。しかし、その石は下にいた子の腕にぶつかり、青あざになりました。

とっさのことで私たちは止めることも叶わず肝を冷やした出来事でしたが、その後みんなでお話をして、「下に人がいるかもしれないから山の上からは石を落とさないようにしよう」という約束をしました。

ケンカしている子どもたちをじっくりと見守ることもあります。

お互いに主張と主張のぶつかり合いをしている時、子どもの気持ちは大きく揺れ動いているのがわかります。そんな全身を使ったやりとりを通してこそ、自分の気持ちを知り、相手の気持ちを知り、それをどうやって伝えて、どうやって聞くかが分かるようになると思います。

ただ、子どもたちはまだ気持ちをうまく伝えることができません。 ある時、こんなことがありました。

3歳の女の子が、みんなが遊んでいるところへ行って、砂山を崩したり無理やり押したりと遊びの"邪魔"をしていました。周りのみんなは「やめて!」というのですが一向にやめる気配はありません。何日もそれが続いて、いつの間にかその子が近づいただけで「あっちにいけ!」と言われるようになってしまいました。女の子はいつも悲しそうな顔をしていました。
そこで話を聞くと、「みんなと遊びたい」といいました。でも、どうやって入れてもらったらいいかわからなくて、いろんなことをしてしまったのでした。

それからは何度も、子どもたちの気持ちを聞きながらどうしたらいいのかを一緒に話しました。
いつの間にか成長した女の子は、友だちができて一緒に遊ぶこともできるようになり、年長になった時には年下の子のお世話をする優しいお姉ちゃんになりました。

みんなが「あの子は意地悪だ」という固定観念をもってしまったとき、言われて悲しい気持ちの子と、遊びの邪魔をされて悲しい子が両方にいました。

そのまま"見守る"だけでは、お互いの心の安全を守れないことがあります。 「見守る」ことと「見放す」ことは似て非なるものです。私たちは見守っているつもりが、いつの間にか子どもを見放してしまわないように気を付けなくてはいけません

放置・放任にならずに子どもたちを見守り、その自由を尊重するには、まずしっかりと関わるということが大切です。子どもたちの自由を見守るからこそ、大人には止める勇気や、口をはさむ勇気が必要になります

大人がしっかりと関わり安心できる環境づくりをすることで、子どもたちはありのままの自分でいられます。自分らしく自由な遊びの中で、判断や選択や成功や失敗を繰り返して、子どもたちは自分に自信を持つようになっていきます。

自然はそんな遊びの多様性にあふれています。そしてそこで身につける"自由を使いこなす力"は大切な非認知能力のひとつなのです。

***

次回は「子どもの冬の自然体験」について野澤さんに教えていただきます。
子どもたちは冬の自然から何を感じ、どう学んでいくのでしょうか。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは1歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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