連載
のんたんせんせいの自然エッセイ

「やってみたいな」に「やってみようか!」と大人が勇気を持てば、子どもも親も成長していける

「やってみたいな」に「やってみようか!」と大人が勇気を持てば、子どもも親も成長していける
園舎をもたず園児たちが毎日森に通う自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんが綴る自然エッセイ。最終回は冬ならではの自然遊びについて。
目次

つらら、霜柱、氷…外に出て冬ならではの自然の変化に出会おう

「池の水、凍っているかな?」

三学期が始まったばかりの日、甲山(かぶとやま)に雪が降りました。うっすらと積もるくらいの雪は、ここで森のようちえんを始めて10年で二回目のことです。子どもたちは景色の変わった白い森を不思議そうに見つめ、手袋をはめた手で触って、葉っぱの上の雪を少し食べたりしました。丸めてお団子にしたり、いつもの坂道をお尻で滑ってみたり、寒さも冷たさも忘れて遊びました。

おさんぽに出かける時、誰かが池の水を見に行こうと言いました。こんなに寒い日には、つららができたり、霜柱ができたり、お水に氷が張ったりすることを知っているのです。
山道を抜けて池に近づくと、子どもたちはいてもたってもいられず駆け出しました。「こおってるよ!」と大きな声が聞こえてきます。みんなのワクワクが噴き出したように「えー!」っという声になって森に響きました。

割れた氷を持ち上げるととても重かったり、落として割るといい音がしたり。池の氷の上にかけらを投げたらシャラララときれいな音を立てて滑っていくことを発見して、何度も繰り返し投げていました。

“いつもと違うこと”に出会うことが子どもたちは大好きです。発見、探検、冒険。踊る気持ちは表情に現れて、いきいきとした顔があふれます。季節がめぐり、冬が来て、今しかない自然が変化していきます。
外に出ることは、"いつもと違うこと"に出会うこと。子どもたちの心は大きく動きはじめます。

「おうちで氷つくってるよ」という子がいました。
お皿に水を入れてお庭やベランダに置いて、毎朝、氷が張っているか見ているそうです。氷ができる日もあるし、できない日もあるとのこと。そうやって毎日が違うことが分かるのはおもしろいですね。
「ドングリ氷もできたよ!」
お皿にドングリを入れて置いたら、氷になった時に、氷の中にドングリが入ったそうです。それはとってもきれいだったとか。子どもたちが森で見つける"ヒサカキ"という木の実があります。つぶすと紫色の汁がでて、色水にしたり、砂に色をつけて色団子にしたり、お化粧をしたりします。今度は、その色水が氷になるかやってみようか!とお話ししました。

子どもの"やってみたい"を存分に叶えるのは大人にも勇気がいる

自然の中では、"おもしろいな"に出会う機会がたくさんあります。その動き始めた気持ちに沿って子どもたちの"やってみたいな"が心の奥から湧き出します。それを「やってみようか」と寄り添っていてあげることで、子どもたちの成長のスイッチが入ります。
もちろん、放っておくと危ないこともあるので、事故にならないように見守ることもが大切です。

"池の氷をとりたい!"と強く思った子が、池の中にずんずん入っていき、腰まで水に浸かりながら氷をとったことがありました。
小さなその池は浅く、大人が長ぐつで入ることができます。溺れる心配はないし、すぐに助けることはできるものの、冷たく寒い冬の日です。止めるかどうか悩みましたが、できるところまでやらせてみようと私自身も決意しました。
そのうち、その子はダウンジャケットを着たまま池に入り、氷を持ち上げようとして座り込みました。そして満面の笑みで満足そうに氷を空にかざしたのです。


その後、寒さで震えたその子の着替えをして、体を温めてひと段落。
帰り道、自分でとったその氷を大切そうに袋に入れて「かあちゃんに見せるんだ」と言ったその子の笑顔が忘れられません。

子どもたちの"やってみたい"をやらせるには、大人の側にも覚悟がいります。どうしても必要上に手出し・口出しをしてしまうことがあります。
だから森のようちえんのような自然保育をしているところにわが子を預けるのも一つの方法です。また、親子で自主的に保育を行うサークルを作るのもひとつの方法です。幼児期に、わが子が育つそのそばにいてそれを見届けることができるのは素晴らしいことです。お互いに預けあうことで、わが子と二人で煮詰まってしまうときも、まわりを見れば助け合う仲間がいてくれます。
子育ては一人でするよりも、みんなでする方が楽しいのです。子どもにとってもたくさんの人に触れることは、たくさんの刺激をもらういい機会になります。

自然の中で、たくさんの子どもと遊ぶ。そこには子どもたちの脳の発達に良いとされる、たくさんの感覚刺激があふれているのです。

さあ、お友だちを誘って、自然の中に出かけましょう。
子どもが自然の中で冒険するように、大人もドキドキしながら新しいチャレンジをしてみましょう。
子どもに寄り添い見守ることは、少し覚悟のいることかもしれません。しかし、そのチャレンジの向こうにはきっと、素晴らしい顔をした子どもたちが待っています。そしてそのとき、子育てをしている大人たちの目は、子どもたちと同じように生き生きと輝きだすことでしょう。

子育ては本当に幸せなことですね。今しかできないことを、いま存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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