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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

GW明けに増える「園に行きたくない」はネガティブなことじゃない!登園しぶりへの寄り添い方とは?

GW明けに増える「園に行きたくない」はネガティブなことじゃない!登園しぶりへの寄り添い方とは?
園舎をもたず園児たちが毎日森に通う自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんが子育てについて綴る連載がスタート。今回のテーマは5月に増える登園しぶりについて。
目次

園舎をもたず園児たちが毎日森に通う自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さん。人気連載「のんたんせんせいの自然エッセイ」に引き続き、子育ての悩みをテーマにした新連載がスタートです。

初回のテーマは新学期、そしてゴールデンウィーク明けに増える登園しぶりについてです。

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こんにちは。森のようちえん さんぽみちの園長、野澤です。

「どうして幼稚園に行かなくちゃ行けないの?」
わが子のこんな言葉にドキッとした経験はありませんか?

私たちの園でも、登園しぶりは5月くらいに多くなります。幼稚園や保育園に行きたくない!ママパパと一緒がいい!という子どもたち。そこにはどんな気持ちが隠れているのでしょうか。

*子どもたちが愛着をもつ大好きな人はママ、パパだけではなくいろいろな存在があります。以下では乳幼児期に愛着を形成する対象を“お母さん”という言葉で代表しています。

新たな世界へ踏み出す寂しさもワクワクも受け止めてあげたい

春先、入園した子どもたちは、"お母さん"から離れるのがさみしくて、大きな声で泣いてしまうことも。それを聞くと"お母さん"も胸が締め付けられて、一緒に涙が出そうになりますよね。

そう、子どもたちもきっとそんな気持ちで泣いています。
生まれてからずっと大好きな”お母さん”と一緒に過ごしてきた子たち。安心できる"お母さん"の側から、急に知らないところへひとりで行くわけですからその不安たるや、大人でも推して知るべしというもの。

だけど、"お母さん"の側から幼稚園という新しい世界に飛び込んでいくのは、港を出港する船に似ていて、子どもたちが自立した自分の世界へ漕ぎ出ていく時なのです。

本音は「泣かないで行ってほしい。けど泣いちゃう気持ちもよくわかる」といったところではないでしょうか。子どもたちも、寂しさと船出のわくわくとの両方の気持ちを持っているはず。そのどっちの気持ちも受け止めてあげたいものです。

そんな時は「寂しいんだね、よく分かったよ」とぎゅっと抱きしめてから、「じゃあ、行ってらっしゃい」と潔く見送ることで、気持ちを切り替えることができたりします
園側では、「"お母さん"がいいんだね、寂しい気持ちなんだね」と受け容れて、寂しさを抱えていることをそのまま受け止めています。

そして新しい世界で、先生やお友達との関係に"お母さん"のような温かくて安心できる居場所を見つけられたとき、子どもの世界は"お母さん"の側から外へ向かって大きく広がっていくのです。

子どもも立ち止まって休憩することで周りが見えてくることも

年中さん、年長さんは、年度の切り替わりでいろいろな変化があります。
去年までの年長さんが卒園し、下の子が入ってきて、自分の立場も変わります。新しいお友達がきて、仲良しの子をとられてしまうんじゃないかと不安になったり、下の子よりもお兄ちゃんお姉ちゃんとしてがんばって見せていたり。

そんな時はどうしても心のコップに水がいっぱいになってきて、ちょっとしたことでも受け止めきれなくてあふれてしまうもの。子どもたちがいつもよりも不安定にみえる春先は、園でたくさん頑張っている証拠かもしれませんね。

どうしても行きたくないという時には、一回お休みすることもあっていいと思います。休みグセがつかないか心配という方もいるかもしれません。でも私たち大人も、いったん立ち止まって休憩することで、ようやく落ち着いて周りが見えてきたりすることがありますよね。子どもたちにもそういう時間が必要なことがあるのです。

親も心にゆとりをもってわが子にそっと寄り添いたい

「幼稚園・保育園に行きたくない!」という気持ちの裏には、成長の芽が隠れています。子どもたちの複雑な気持ちが揺れ動いているけれど、それは決してネガティブなことではないはず。前に進もうとしてもがいている子どもたちの気持ちにそっと寄り添って、支えてあげてほしいと思います。

ただ、そんな時に私たち大人の心のコップの水がいっぱいになっていると、子どもたちのちょっとしたことでも受け止められずあふれてしまいます。イライラしたり、怒ってしまったり、不安が募って悩みに悩んでしまったり。

まずは、心に少しのゆとりをつくる努力をすると良いと思います。子どものことは頭からいつも離れませんから、心のゆとりを優先しても大丈夫。そして、子どもは気持ちを受け止めてもらえたら安心して必ず前に歩き出すものです。

そんな心のゆとりのためにも子どもたちと一緒に自然の中に出てみてはいかがでしょうか。風にそよぐ木の葉の下では、子どもたちの笑い声も泣き声も、どたばた走ることもわんぱくなことも、みんな「まあいっか!」と許せてしまいます。

ひとに迷惑がかからないなら、思いっきり発散してもいいところ。興味のつきない不思議がいっぱいあふれるところ。それが自然の醍醐味です。

日常の喧騒を緑の風に洗い流して、いろんなことを「まあいっか!」と思えたら、子どもと一緒に笑っている自分に気づくはず。そして、気持ちがいっぱいいっぱいだった自分を、子どもだけじゃなくて大人も一緒に、リセットできているはずです。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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