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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

砂遊び・泥遊びに象徴される【感覚遊び】。「感覚は発達の土台」だからこそ、子どものペースや好みを大切に

砂遊び・泥遊びに象徴される【感覚遊び】。「感覚は発達の土台」だからこそ、子どものペースや好みを大切に
園舎を持たず森での自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて綴っていただく連載。今回は、砂遊び・泥遊びなどに象徴される子どもの感覚遊びについて。
目次

子どもは、砂だらけになったり、泥んこになって遊ぶのが大好き。
汚れることを気にせず遊びに没頭する姿を「あらまあ(でも洗濯が大変…)」とほほえましく見守るママやパパも多いのではないでしょうか。

でも、中には手や服が汚れることを嫌がってあまり遊ぼうとしない子も。親としてはそんなわが子の姿を見るとどうして?と気になることがあるかもしれませんね。

"感覚遊び"の大切さと親の寄り添い方について、「森のようちえん さんぽみち」園長の野澤俊索さんに教えていただきます。

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雨の日、泥で遊ぶのは子どもたちの特権です。

私たちの園では、冬の冷たい雨の日でもカッパを着て「遊びにいってきまーす!」と元気に飛び出していきます。砂を掘って水たまりの水を流したり、泥団子や泥のケーキを作ったりしています。

ぺたぺたと泥の表面を叩いていると水が浮いてきて滑らかで柔らかくなります。誰に教えられたのでもなく、どの子もそうやって土の感触を楽しんでいます。

でも、初めからこうして遊ぶ子ばかりではありません。中には手が汚れたり、服が汚れたりするのをとても嫌がる子もいます。

そんな子も、みんなが遊んでいる側にいてその様子をじっと見ているうちに、指先で泥に触れてみたりしはじめます。それを繰り返すうちに、泥がつくことをなんとも思わなくなって、より大胆に遊ぶようになります。

子どもが泥や砂にまみれて服を汚しながら遊んでいる姿を見ると、子どもらしくて微笑ましいという気持ちになるでしょう。しかし、嫌がる子には決して無理にさせる必要はありません。なぜでしょうか。

遊びを通したさまざまな感覚の体験が成長につながる

砂や泥などを使って創作造形をして遊ぶようになる前に、子どもたちは「感覚遊び」をしています。泥や砂が冷たいのか温かいのか、ざらざらかトロトロか、柔らかいか固いか、などいろいろな感触を味わっています。

「感覚は脳の栄養素」と言われています。
子どもたちは遊びの中でいろいろな感覚刺激を得て、手を介して直接脳に働きかけています。そのため、手は第二の脳とも言われます。
赤ちゃんの頃から、いろいろなものを手づかみでぐちゃぐちゃにしたり散らかしたりするのは、本能的に備わっている成長への欲求のひとつなのだと思います。私たちはそれを"遊び"と呼んでいるのです。

また、「感覚は発達の土台」とも言われます。
感覚はいわゆる五感に加えて、手足の状態や動きを感じる感覚(固有受容覚)や体バランスやスピードを感じる感覚(前庭覚)があります。生きているだけで絶えず入ってくる、こうしたたくさんの感覚刺激に対して、脳は、分類したり、整理したりしています。これを"感覚統合"と呼びます。

感覚統合がすすむと、子どもたちは、自分の体をうまくコントロールしたり、道具をつかったり、周囲の状況に合わせた行動をとったりができるようになっていきます。

こうして、たくさんの感覚刺激を土台として、その上に運動の力や器用さ、言語の獲得、それらを使ったコミュニケーションなどの力が発達していきます。そこで遊びや生活の環境の中で、子どもたちに十分な感覚刺激を保障することが、その成長につながる大切なことだと言えます。

それぞれのペースで感覚への経験を積んでいく

ところが、子どもたちの中には感覚が敏感であるが故に、感覚刺激を楽しむよりも不快に思ってしまうことがあります。

私たちでも、急に手に何かが触れた時にはびっくりして手を引っ込めてしまうことがありますよね。泥や砂に触れた経験が少ない子どもたちは、それと似たような気持ちを味わっているのではないでしょうか。

しかし、指先で少しずつ触れていくうちに感覚統合が進み、より大胆に遊べるようになっていきます。虫をつかんだり、木登りをしたりする時にも同じようなことがいえます。何度も繰り返して、感覚への経験を積むことで、子どもたちは成長していきます。そしてより"子どもらしく"遊ぶようになっていきます。

子どもたちは少しずつ経験して、大きくなっていきます。なかなか泥遊びができない子も、今はそういう時なのだと思ってみてはいかがでしょうか。

成長は指先などのちょっとのことから始まっていくもので、一足飛びにはおこりません。また、べたべた、どろどろなどの感覚を経験することは、実はおうちの中でもできることです。

お団子づくりを一緒にすることや、新聞紙をちぎって遊んでもいいかもしれません。おうちの中でこうした遊びを一緒にすることで、外での遊びもまた変わってくることと思います。

どんな時でも「遊びたい」という根源的な欲求があるのが、子どもたちです。遊ぶとは、まさに生きていることそのものなのだと思います。

ゆっくりと成長していく子どもたちを、焦らずにおおらかな気持ちで見守っていくことが私たち大人の使命なのではないでしょうか。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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