子どもの発達とおもちゃに関する著書もある、城東よつばこども園園長の瀧薫先生に「良いおもちゃ」の選び方を聞く連載。
第1回では、子どもの発達に合わせておもちゃを選ぶポイントについて伺いました。
今回は子どもが大好きなおもちゃの一つ、積み木について。
0歳から楽しめる積み木も多く「なんとなく発達に良さそう」と積み木を購入する親も多いでしょう。つい素材やデザインなどで選んでしまいがちな積み木ですが、じつは発達に合わせて選んだほうがいいのをご存じでしょうか?
積み木で遊ぶことは、子どもたちのさまざまな能力を育ててくれます。
素朴な形の積み木は子どもたちの表現力や創造性を刺激しますし、「頭の中にあるイメージを積み木で表現するにはどうしたらいいか?」と考えることを繰り返す中で、問題解決能力も育みます。
思考面だけではありません。積み木を高く積むために手や指で微調整したり背伸びしたりかがんだりという動作によって身体のスムーズな動かし方を学んだり、積み木の感触、香り、音などが五感を刺激します。
また見る角度や置き方によって形を変える積み木は、空間の認識や数・図形の基本概念を感覚として身につけるのにも役立ちます。そのほかにも積み木は根気や集中力、豊かな情緒や感性を育む一助にもなります。
このように積み木遊びを通じて、子どもたちは多彩な力を育み、さらに積み木を使ってゲームをしたり、ごっこ遊びをしたり遊びを広げていくこともありますよね。
少ない数の積み木を積み上げるだけだった子どもも、3歳以降から知的興味や関心が急速に高まることで、積み木を高く積み上げたり実際にあるものを積み木で作ってみたりと遊びの幅がぐっと広がります。
積み木を選ぶ時は、年齢や発達のスピードに合ったものを選ぶことが大切です。
3歳ごろの子どもは自我が成長し、主体性が育つ時期です。ものごとに対して、「なんで?」「どうして?」と知的興味や関心が高まっていくでしょう。
お休みの日に行った動物園の様子を積み木で再現してみるなど、実体験の豊かさが遊びの豊かさにつながる時期でもあります。
まだお友だちと同じ場所にいてもそれぞれが独立して遊ぶいわゆる「平行遊び」が主流ですが、お友だちの遊びをまねしたり同じ道具を共有したりするなかで少しずつ子ども同士で関わることを覚えていきます。
基本の積み木としておすすめのドイツのデュシマ社の定番積み木です。教育学者フレーベルの理念にもとづいて、積み木の大きさ=「基尺」を大切に作られています。
この積み木は幅約3.3cmで、一番小さな積み木を3個並べると10cmになるように作られおり、これは子どもの手の大きさにぴったりになるように作られているんだそう。
「基尺」は積み木を選ぶときのポイントの一つ。縦・横・高さが倍数になっていることで、子どもは積み木の向きに関係なく高さを合わせられ、遊びが広がりやすくなります。
スイスのネフ社の積み木。斜めに積むことができて、色彩も美しい世界中で愛されている積み木です。
手先の巧緻性(こうちせい)が育ち、「何でも自分でできる」という意識があるので、自分でさまざまな形に組み合わせて色や形を楽しめるものが、子どもの自信を育てます。
4歳ごろの子どもはお友だちとのつながりがより深まる時期です。仲間同士で同じ目的をもって遊ぶようになり、共同で作品を作るようにもなります。
この時期を通して自己を発揮することと他者と協調して生活していくという社会性を身につけていくので、お友だちとのケンカが増えることもあるでしょう。
また、このころは高さへの憧れが育つ時期でもあります。踏み台を使って積み木を高く積み上げる姿が見られることもあるでしょう。失敗しながらも徐々に積み木を高く積み上げていくことで心の葛藤と折り合いをつけたり、思考力を育んだりしていくのです。
さらにこの時期は、家を上から見た間取り図を作るなど、物に対する視点の変化が積み木遊びにも見られます。想像力も豊かになり、作りたいものが多様になるので、基本的な積み木にカーブやジグザグ、球体・半球体など形のバリエーションが入ったものがあると遊びの幅が広がります。
フランスで生まれたかまぼこ板状のシンプルな積み木「カプラ」は、高く積み上げて大きな作品を作れるのが魅力。円柱形に積んで、かまくら状にして中に入って遊んだりダイナミックに楽しめます。
お友だちと協力して遊ぶのも楽しいので、ぜひママ・パパもいっしょになって遊びましょう!
テーブルの上などで一人で遊ぶなら、ジーナ社の「ハニカム」もおすすめ。認識力や色彩感覚を育む時期なので、ユニークでカラフルな積み木が刺激になります。平面の組み合わせや斜め積みなど、独創的な積み方に挑戦して、じっくり遊びこみます。
5歳ごろの子どもは言葉によるイメージ力が豊かになり、表現の幅がぐっと広がります。積み木に別のおもちゃを足して作ってみたり、引き続きお友だちと協力しながら作品を作る中で思考も深まっていくでしょう。
5歳ごろの子どもにはただ積み上げるだけでなく、例えば「組み立てクーゲルバーン」のような工夫の幅が広がるような積み木がおすすめです。
ちょっとしたズレによって玉の動きが変わるのを見て、物理や図形の概念を感覚的に学ぶことにもつながります。
時間や空間を認識して、少し先の見通しが持てるようになる5歳ごろは、玉転がしの積み木がぴったり。
積み木の位置が少しずれると、玉の転がり方が変わるので、試行錯誤しながら熱心に遊びます。
6歳ごろの子どもは思考力がかなり深まり、持てる知識を総動員して創意工夫する姿が見られます。積み木の性質を理解して使い分けたり、これまで培った技術を活かして表現したりする場面も増えるでしょう。
6歳ごろの子どもには組み立てクーゲルバーンよりもさらに高い思考力が求められる「キュボロ」がおすすめ。
「キュボロ」は、棋士の藤井聡太さんが幼いころに遊んでいたことで有名になりましたが、音や感覚で組み立てる高度な能力が求められるため、カプラやクーゲルバーンなどで積み木の基礎を身につけてからチャレンジしないと難しいことも。
楽しめるようになれば、小学校高学年になっても遊べますよ。
玉転がし積み木の決定版ともいえる「キュボロ」。玉の道が外からは見えず、玉が転がる道を頭の中で予測しながら積み木を組み立てる必要があります。
予想や見通しをつける力がつきはじめているからこそ、楽しめるこの時期にぴったりの積み木です。
***
積み木は創造力や集中力、根気など一生モノの能力を培うのをサポートするおもちゃ。
一方で、子どもの年齢や発達具合に合ったものでないと、いくらいい積み木でも効果を発揮するのは難しいものです。
ぜひこの機会に子どもに合った積み木を選んでみてはいかがでしょうか?
社会福祉法人子どものアトリエ理事長 城東よつばこども園 園長 大阪芸術大学短期大学部講師 瀧 薫
「保育と絵本」「保育とおもちゃ」などの著書があり、3児のお子さんのママでもあります。
ライター 内山沙希
口が達者になってきた3歳女の子ママ。ライター歴9年目。転勤族の妻としても日々奮闘しています。現在はキャリア・育児系を中心に記事を執筆中。毎日がんばるママが笑顔になれるようなお役立ち情報を発信します。
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