連載
子育て先進国スウェーデンに学ぶコミュニケーション術

ちょっと待って!子どもの成長の機会を親が奪っていませんか?

ちょっと待って!子どもの成長の機会を親が奪っていませんか?
【現地の教育専門家が解説】子育てしやすい国・スウェーデンの教育に子育てのヒントを学ぶこの連載。今回は、子どもを"考える主体"にするために、親が日ごろから心がけたいことを紹介します。
目次

前回の記事「「自分で考える」チャンスをわが子から奪っていませんか?思考力を伸ばす言葉VS芽を摘む言葉」では、子どもに「やりたい!」という意欲が芽生えたとき、大人がどうアプローチすれば子どもの考える力を育むことができるのかについてご紹介しました。大切なのは子どもの意欲に寄り添うこと
それでは、大人は子どもに「こうしたい!」「やりたい!」という意欲がわいてくるのを待つことしかできないのでしょうか。

子どものことは「一緒に決める」のが大切!

自分のことなのに周りで常に決められていると「どうせ自分の意見は通らない」「人が決めてくれるんだ」「自分には決めるだけの能力がないんだ」という無言のメッセージを子どもは受け取ってしまいます。

ですから、日常の中で子どもが自分で決める、選択できる機会を積極的に設けてみてください。子どもの年齢や成熟度に合わせて、選択肢をつくったり、一緒に話し合ったりできるといいですね。
お休みの日に何をして遊ぶか、夜ごはんはどのお皿で食べるか、おやつのフルーツは何にするか…など日々の小さなことで大丈夫です。

スウェーデンには「土曜日のお菓子」と言って土曜日はお菓子を食べてもいい日、としている家庭が多いのですが、子どもがそれまで待てずにスーパーでお菓子をねだっている光景を目にすることがあります。そういう時に「今日食べるなら土曜日は食べられないけど、今日がいいの?」と言って子どもに決めてもらうのです。

また、習い事や誕生日パーティーについても親子会議がされるのをよく聞きます。「もう3回も行きたくないって言ってお休みしているけど、辞めたいの?」と聞くと、続けたいと言う子ども。よくよく聞けば習い事は好きだけど、お友達とケンカしてしまったからだったそうです。聞いてみなければわからなかったことだと思います。

誕生日パーティーでは何を食べるか、誰を招待するか、どんな飾りつけをするか、など子どもと一緒に決められることがたくさんあります。

何かを決めるには、情報が不可欠です。
どんな選択肢があるのか、それぞれの選択肢で何が得られるのか、またどんな影響があるのか。子どもにそれを考えてもらったり、大人が補足したりすることで年齢や成熟度に合ったアプローチができます。
選択肢を想像するのが難しい年齢の子には、写真や実物を見せながら「こっちとこっち、どっちがいい?」と聞くのもいい手助けになります。

最終的な決定は親がしたとしても、意見を言える機会があったかどうかは、子どもが考える上で大きく異なってきます。その際には、「○○が良かったよね。悲しいのはわかるよ。○○だから今回はごめんね」など、なぜ子どもの意見が採用されなかったのかを伝えられるといいと思います。

決定に加わることで子どもが"考える主体"になる

私の園でフローリングの張替えをしたとき、子ども達にどの色がよいだろうかと、事前に先生たちが選んでいた3色の中から投票してもらったことがあります。子どもたちは、自分の教室の床の色を、自分たちで決められることに、とても誇らしそうにしていました。一緒に決めるという「手続き」一つが、子どもを「考える主体」にしてくれるのです。

大人は、子どもの「できる/できない」を勝手に判断しようとしてしまいがちです。子どもの成長は早いですから、正確に何ができて、できないのかを把握するのは、とても難しいことですよね。だからこそ、子どもにもトライアル&エラーなんです!

大人が、子どもの挑戦から学ぶ過程をフォローしながら、子どもが成長する機会を奪わないこと…そして、ときには親子で新しいことに挑戦してみるのもよいかもしれませんね。
子どもと大人が、一緒に考え、一緒に失敗し、一緒に挑戦することの勇気を築いてもらえたらと思います。

教育方法学の専門家・中山芳一先生のひとことメモ

私たちは、子どもたちに考えることを押し付けてしまうときがあります。「もっとしっかり考えなさい!」という具合に…。また、その逆で子どもたちに考えることを放任してしまうときもあります。「自由に考えたらいいのよ!」という感じでしょうか…。

子どもの状況に応じた選択肢を提示しよう

そんな私たちに、田中さんは子どもが決めるとき、年齢や成熟度に応じた私たち大人の具体的なサポートのあり方を教えてくれました。 特に、今回の最大のポイントは、「情報(選択肢)」の提示といえるでしょう。この情報には、以下のような選択肢が挙げられます。
まずは、3つの色のうちのいずれか…といった「横並び」の選択肢です。
次に、もう3回もお休みしてるけど…といった「振返り」の選択肢です。
そして、今日か土曜日か…といった「見通し」の選択肢があります。
さらに、私はこう思う(感じる)けどあなたは…などの「他者間」の選択肢も含まれますよね。

これらの選択肢の中で、子どもの状況に適したものを情報として提示してみましょう。もちろん、そこには適したタイミングや提示の方法があることも忘れないでくださいね!

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監修者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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執筆者

スウェーデン就学前学校Guldklimpar COO 田中 麻衣

福岡県生まれ。大阪大学外国語学部卒。高校と大学で1年ずつのスウェーデン留学を経て2012年に移住。スウェーデン学童保育の再建をきっかけに、スウェーデンの学校運営に携わるようになる。ストックホルム大学にて校長資格取得。教頭、校長職を経て、現在は幼稚園運営及び特別支援教育専門のコンサル企業に所属し、各地現場の環境・内容・方法等のマネジメント及び人材育成に携わっている。

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