世界はもとより、いま日本でも大注目を集めている「モンテッソーリ教育」。先行き不透明な変化の激しいこれからの時代に必要不可欠な「生きるチカラ」を育むのにぴったりの教育メソッドとして、ますます注目され広がっていくだろうといわれています。
耳にすることはあるけれど、いまいちよくわからない…。わが子の子育てにどう取り入れたらいいの? などの声に応えるべく、日本モンテッソーリ教育綜合研究所の櫻井美砂先生に「モンテッソーリ教育」についてわかりやすく教えていただきました。
モンテッソーリ教育とは、ローマ大学最初の女性医学博士であり、教育家でもあるマリア・モンテッソーリ博士が考案した教育方法。マリア・モンテッソーリ博士は、イタリアに生まれ、医師として障害児の治療教育に携わりながら、実験心理学、教育学にも研究分野を広げて、大きな成果をあげた女性です。
ローマ不動産協会が貧困層向けのアパートに保育施設を設けた際、その監督・指導を彼女は任されます。1907年1月に生まれたその保育施設が「子どもの家」。ここでは、彼女がいままで障害児に用いた教育法を、健常児にも適用して、成果をあげていきます。その「子どもの家」での実践から生まれたものが「モンテッソーリ教育法」です。ちなみに、現在でも『子どもの家』と称する、モンテッソーリ教育実践施設が多くあります。
近代以前、子どもとは大人の従属物であり、小さな大人であり、重要な働き手であると考えられていました。「子ども期/児童期」という概念はなく、子どもは無知なため大人と同じようにふるまえるようひたすら知識を詰め込むべきというのが、子どもに対する考え方でした。
それが近代以降、子どもとは大人とは違うもの、発達・成長過程においては「児童期」は非常に大切であるという考え方が主流になってきます。そしてその中で、マリア・モンテッソーリ博士は「子どもには、自分で自分を育てる力が元々備わっている」という「自己教育力」の存在を前提として、その教育法を確立していきます。
モンテッソーリ教育の目的は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことです。
そのために、子どもの「自ら育つ力」を存分に発揮できるように援助することが重要となります。
前述のとおり、モンテッソーリ教育では、子どもは「自分で自分を育てる力」を備えていると考えています。そのため、その力を引き出せるような「整備された環境」を用意したり、その環境に子どもが主体的に関わるための方法を知り導くことが大人の役目だと捉えています。
つまり、モンテッソーリ教育とは、大人の価値観を一方的に教え込もうとするものではなく、大人が子どもの興味や発達段階を正しく「観察・理解」し、子どもがやってみたいと思う「環境を整備・用意」し、そのやり方を「提示」することで、子どもの自発的な活動を促していくものなのです。
また、この興味・発達段階・環境の整え方・やり方が極めて体系化されているのもモンテッソーリ教育の大きな特徴といえるでしょう。
さて、このモンテッソーリ教育、日本では1912年に初めて紹介されました。最初は英才教育や早期教育として伝わっていきました(その理由については後述*)。
しかし、現在の日本でモンテッソーリ教育が注目されているのはその理由からではないでしょう。櫻井美砂先生はその理由をこう考察しています。
「先述のとおり、モンテッソーリ教育で育まれる力とは、『自ら考える力』です。そして現代、世界はどんどん複雑化し、非常に速いスピードで変化し、未来はどんどん予測不可能なものとなっています。
そんな中、従来の日本が重視してきた知識詰め込み型の教育では、新しい時代を生き抜くことがなかなかむずかしくなってきていることを、多くの人が実感し理解し始めました。今回の新型コロナウイルス対応という全世界的な課題においても、新しい発想や変化が必要となりました。
そんな時代だからこそ、『自ら考える力』、そしてそれにより『新しい発想や新しいものを生み出す力』を育むモンテッソーリ教育が必要だと、注目されているのではないでしょうか」
さらに、実際に自ら考え、新しい発想や新しいものを生み出した著名人たちが、実際にモンテッソーリ教育を受けていたことが知られるようになったのも、モンテッソーリ教育に注目が集まったもっとも大きな要因の一つです。
特に日本で注目されるきっかけになったのは、将棋棋士の藤井聡太さん。史上最年少(14歳2か月)でプロ入りを果たし、そのまま公式戦最多連勝記録を樹立。以降さまざまな記録を更新している彼について知らない人はいないことでしょう。 彼は、幼稚園でモンテッソーリ教育を受けており、色のついた画用紙を編んで作る「ハートバッグ」を毎日作り上げ、100個も家に持ち帰ったんだとか。モンテッソーリ教育で育んだ忍耐力や集中力が、将棋においても発揮されているといわれています。
また、最近注目の「GAFA」の創始者たちもモンテッソーリ教育を受けて育ったことで話題となりました。特に有名なのがGoogleの共同創業者、ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏で、彼らは自身の成功を「モンテッソーリ教育の賜物」と公言しているだけでなく、その学びを会社経営にも生かしていると言われています。
いかがでしたか?知っているようで知らなかったモンテッソーリ教育について。 明日は、幼児期のモンテッソーリ教育について詳しく紹介していきます。
日本モンテッソーリ協会の「教師養成センター」として、1976(昭和51)年にスタート。「教師養成センター」は、通信教育によって、モンテッソーリ教育を3歳〜6歳の幼児対象に実践する教師養成を目指し設立されました。1977年、当時の国立教育研究所所長、日本モンテッソーリ協会会長の平塚益徳先生の提唱によって「日本モンテッソーリ教育研究会」が設立され、「教師養成センター」は同研究会に継承。1979年同研究会は「日本モンテッソーリ教育綜合研究所」と名を改め、1985年からは「財団法人才能開発教育研究財団」の幼児教育普及部門となりました。2011年、公益財団法人として認定を受け、現在は「公益財団法人才能開発教育研究財団 日本モンテッソーリ教育綜合研究所」として財団の掲げる「健康で豊かな子どもたちの育成」という目的のもと、教師養成センターと附属の「子どもの家」を運営しています。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属『子どもの家』副園長/日本モンテッソーリ教育綜合研究所主任研究員 櫻井美砂
日本女子大学家政学部 児童学科卒業 同大学院(人間社会研究科 教育学専攻)在学中。日本モンテッソーリ教育綜合研究所・教師養成通信教育講座「3歳~6歳コース」「0歳~3歳コース」ディプロマ取得。MOMTEP(ミズーリ州セントルイス)にてAMS 2歳半~6歳コース資格取得。保育士資格・幼稚園教諭一種免許状・小学校教諭一種免許状取得
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