連載
イマドキ親世代に伝えたい・頭のよい子の育て方

親子コミュニケーションを育む家づくりをするために、知っておきたい5つのポイント

親子コミュニケーションを育む家づくりをするために、知っておきたい5つのポイント
「”本当に頭のよい子”が育つおうち空間の作り方」の連載でもおなじみ、「頭のよい子が育つ家」(文春文庫)の著者である四十万靖さん。頭のよい子を育てるためにイマドキ親世代にいまこそ伝えておきたいことをテーマに新連載がスタートします。第6回からは「コミュニケーション能力が育つ家を具体的に築く方法」について。
目次

こんにちは、連載「イマドキ親世代に伝えたい・頭のよい子の育て方」では、前回子どものコミュニケーション能力を育む家づくりでは、人間の五感に訴えること・空間の過去、今、将来の継続を考えることの大切さを説明しました。

そこで今回は具体的におやこのコミュニケーションを育む家づくりに必要な要件についてお話します。

親子のコミュニケーションを育む「空間工学理論=SSTECH」を理解する 

親子のコミュニケーションを語る上で、その舞台である“おうち”について体系的に私がまとめたのが「空間工学理論」です。その5大分類を紹介しましょう。

【探求】

空間の形や大きさ、それを構成する素材、光と影が作る雰囲気等から子どもは様々な印象を受け、想像力がかきたてられる。自分の場所、お父さんの場所、ハレの場所、心休まる場所など空間の違いを意識して家の中の世界地図を構成する。また書籍から、テレビから、親子の会話から知的な刺激を受けて知の世界にも居場所が広がる。そして家族のきずなを深めることで、自分と家族や親戚との関係、味方である大人たちの中の自分の立ち位置を確認し、信頼関係を深めることができる。子どもは探求を通じて自分の世界を作り、そこに何かを発見し、考え、調べ、理解を試みながら、自分で学ぶ。探求のプロセスを促すことで深く広い知識や判断基準の引き出しを作ることができる。

【表現】

自分の発想で作ったものを飾ったり、空間自体に手を加えたりすることは、家の中で自分の世界を提案し、表現し、親にその承認を迫ることである。親に認められることで自分の居場所が確立され、親との関係に安心感が生まれる。自己表現が自信につながり学びと好奇心が増大する。子どもが自らの考えで家の中の景色を変えたいと思い、それを承認し、容認する仕掛けを用意することで、子どもはその誘いに応えてくれる。

【共有】

自分の表現を認めてもらい、反応してもらう。家族の中で経験や評価や価値観を共有し、意見をしてもらうことで子どもは自分の存在を確認し、自我の意識が芽生え、家族の一員としての在り方を試行錯誤し、考えをさらに深めて新たな探求を始めることができる。双方向の表現や関与と家族の中の自分という意識によって共有のプロセスがより深く、より効果的に行われるようになる。家族の中の自分を活かすためのコミュニケーションの仕掛けを多く取り入れる事で、家自体が成長の器となる。

【感性環境】

探求・表現・共有という行動のサイクルを自発的に行えるような子どもは、観察力が高く、自分の考えに自信があり、コミュニケーション能力が高い子である。そのベースとなる感受性は、日常の外の世界との刺激のやり取りで自然に発達する。その舞台となる家自体が五感を刺激するような環境であってほしい。できるだけ四季の移り変わりを感じさせ、聴覚、嗅覚、触覚、視覚、そして味覚でも豊かな経験を日常から味わえる環境は子どもの感性を活発化させる。

【健康環境】

探求、表現、共有のプロセスが回り出し、五感に刺激を受取るための基盤として健康な生活の場としての住宅の基本性能も重要である。さらに将来の日本や地球の在り方を左右するエネルギー消費や温暖化対策を意識できる自宅は、家を建てるものの責任として理解を深める点でも、またこれからの世界に共通化しつつある価値観の一つを体験する点でも重要であると思われる。

探求・表現・共有項目は、家の導線計画、家具のレイアウト、キッチンとテレビの関係など全体の60%を占めています。

感性環境は子どもの五感に訴える建材や素材の選び方で20%、健康環境は人の健康に影響を与える高気密・高断熱のような家の健康環境の作り方で20%、合計100%となります。

この基準がSSTECHで、コンピュータのOSと同じ役割です。ワードやエクセルと言ったアプリケーションソフトは、OSが古いと新しい機能が使用で来ません、それと同じで家のOSが古いと、折角最先端の技術やデザインを導入しても使えないのと同じ事なのです。

ちょっと難しいかもしれませんね。では具体的な例でみていきましょう。

家族のコミュニケーションを促進するうえで、ものを〝書く〟習慣は重要です。この目的のため、オリジナルのガラス黒板を開発し家の中に備え付けました。

素材として選んだのは、ガラスが砂で出来ている究極の自然素材で、お医者さんからアレルギーフリーとされたものを。この点は健康環境に反映されて1点となります。またガラス黒板をどこに据え付けるかは間取りによって決めていきます(一般論でいえば家族共有スペース、ダイニング・キッチン、リビング、廊下や玄関などになります)。大きさは900x1,800㎜。理由はお子さんがもの心ついて動き始め、落書きし始めるのに対応するには壁一面の大きさにする必要があるから。そして壁の基本的な大きさが900×1,800㎜だからです。場所と大きさを鑑みると、探求・表現・共有カテゴリーで2点、合計3点となります。

こうやって家の設備や環境を数値化し、よりよい家づくりをしていくという考え方が「空間工学理論(SSTECH)」なのです。

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SSTECHを理解するには、まず、現在の住んでいる家が何点なのか、まずはご自身でチェックしてみるとよいでしょう。 頭のよい子が育つ家 おうちの通信簿 無料ダウンロード用フォーム

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執筆者

一般社団法人 四十万未来研究所 代表理事 四十万靖(しじまやすし)

慶應義塾大学経済学部卒業後、伊藤忠商事入社。退社後、2003年、慶應義塾大学とのライセンス契約による、住宅の総合コンサルティングを行う、事業投資会社eco-s corporation設立を設立。2006年4月より慶應義塾大学SFC研究所所員 (訪問)として慶應義塾大学SIVアントレプレナー・ラボラトリ生活産業プロジェクト代表を兼任。2008年、eco-s corporationをスペース・オブ・ファイブ株式会社に社名変更。2014年、一般社団法人 四十万未来研究所を設立。著書に「頭のよい子が育つ家」(文春文庫)、「頭のよい子が育つ本棚」(学習研究社)、「頭のよい子の家にある『もの』」(講談社)など。http://shijima-mirai.or.jp/

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