連載
子育て先進国スウェーデンに学ぶコミュニケーション術

例えばおもちゃに手が届かない…!わが子の"困った"シーンで親はどんな声をかける?どう見守る?

例えばおもちゃに手が届かない…!わが子の"困った"シーンで親はどんな声をかける?どう見守る?
【現地の教育専門家が解説】子育てしやすい国・スウェーデンの教育に子育てのヒントを学ぶこの連載。自分で考えることのできる子にするために、親はどう導いていくべきなのでしょうか。
目次

前回の記事ちょっと待って!子どもの成長の機会を親が奪っていませんか?では、わが子を"考える主体"とするために、子どもが自分で決めることができる機会、意見を言える機会を作ることの大切さをご紹介しました。
それでは、子どもが行動を起こしたとき、大人はどんなことを大切にしながら見守ればよいのでしょうか?

子どもが問題解決のステージに立ったら見守って

さて、子どもは「こうしたい!」という気持ちが芽生えると、そのために行動を起こします。おもちゃで遊びたいと思えばそのおもちゃを取りに行くでしょう。しかし、そのおもちゃが手の届かないところにあったらどうでしょう。まさに問題発生です!

すると、子どもは「どうすればそのおもちゃを取れるのか」という問題解決のステージに立つことになります。このとき、大人が取ってあげるのは簡単ですが、それでは自分で取ることができない、と決めつけてしまうことになります。

まずは取ってみようとするか、「おもちゃ取って」と助けを求めてくるか、少し待ってみましょう。そのうえで、挑戦できるようにサポートしたいなら、「どうやったら取れるかな?」と聞いてみるのもよいでしょう。

メリットとデメリットを伝えて、どんな結果が予想できるか考えてみる

子どもは、年齢が上がるにつれて「自分でやりたい」という気持ちを強く持ち始めます。たとえば、お子さんが「クッキーをひとりで作りたい!」と言ったとしましょう。

でも、子どもが一人だけで熱いオーブンを使うのは危険なので、大人が一緒に作った方がよいと思った場合。そんな時には、ぜひ以下のように話し合いや提案をしてみましょう。

「ひとりだとオーブンでやけどしないか心配だから、一緒につくりたいな。いい?」
「どうやったらケガややけどをせずに作れるかな?」
「助けてほしいって思った時はとなりにいるから、私のこと呼んでくれる?」

このように、子どもへ頭ごなしにダメだと言わないけれど、親の方もゆずれないところがある…といったときには、それぞれのメリットとデメリット、そして予想される結果を一緒に考えてみましょう。

特に、予想を立てるためには、これまでの経験や知識を使って、起こり得る結果を想像する必要があります。考える力を伸ばすのにはとてもいい訓練なので、おススメです。

考える力を伸ばすチャンスは結果以上に「プロセス」にある

さて、いよいよクッキーが完成しました。しかし、あまりおいしくないクッキーになってしまったとしましょう。

そんなときには、「ここまでは上手くいってたね」などフォローしながらも、「じゃあ何が上手くいかなかったのかな?」と投げかけることができます。

実は、結果以上に、そこまでの過程や段階には、考える力を身に付けるためのチャンスが転がっています。そこをぜひ振り返りで掘り起こしてみてください。

わが子が失敗したとき、悲しんでほしくないからついつい手助けをしたくなりますよね。
これから先、子どもは一度も失敗せずに、いつもニコニコしていられるわけではありません。だからこそ、ときには安易な手助けをぐっとこらえて、失敗しても次はもっと上手くできる、悲しいときには慰めてくれる大人がいる…子どもにはそう思ってほしいものです。それこそが、子どもが真に自信を持つことになるのではないでしょうか。

スウェーデンの大人たちは、このように子どもが安心して挑戦や失敗のできる場づくりを意識しています。

教育方法学の専門家・中山芳一先生のひとことメモ

子どもが考える力を育むのに必要な「安心」

じつは、人と人がコミュニケーションをする上で、最も難しいのは「SOSを出すこと」といわれています。子どもが大人へと育っていくにつれて、自分の弱さやできないところをさらけ出し、周囲に助けを求めにくくなるというのも、なんだかわかる気もしてしまいます。

今回の田中さんのお話は、このことをすごく考えさせられました。仮に、子どもの「やりたい!」を大事にしていても、当然のことながら実行レベルによっては、一人だけでできることなんて限られていますよね。

田中さんは大人はいつでもSOSを出してもらえる存在になってくださいと述べました。これは、子どものメンタルケアの視点からも大変重要なことだと思います。ともすれば、子どもは成長とともに親へプラスのこと(よかったこと、ほめてほしいこと)ばかりを話すようになります。なぜなら、子どもは親から承認されたいし、親も子どもを承認したいからです。

しかし、本当に大事なのは、マイナスのこと(イヤだったこと、うまくいかなかったこと)も話すことができて、ときにはSOSをいつでも出せることではないでしょうか。そのために、私たち大人は子どもの「できる」を承認するだけでなく、子どもの「できない」も受容することで、本当に安心できる場を作っていきたいものです。

安心できる場だからこそ、失敗を振り返ることも可能になるのでしょう。子どもが、意欲を持って挑戦する、そして自分で考えるようになるために、じつは最も必要なのは「安心」であることを忘れないようにしていきたいですね。

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監修者

岡山大学准教授 中山 芳一

1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。

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執筆者

スウェーデン就学前学校Guldklimpar COO 田中 麻衣

福岡県生まれ。大阪大学外国語学部卒。高校と大学で1年ずつのスウェーデン留学を経て2012年に移住。スウェーデン学童保育の再建をきっかけに、スウェーデンの学校運営に携わるようになる。ストックホルム大学にて校長資格取得。教頭、校長職を経て、現在は幼稚園運営及び特別支援教育専門のコンサル企業に所属し、各地現場の環境・内容・方法等のマネジメント及び人材育成に携わっている。

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