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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

お友だちを遊びの輪に入れない…意地悪しないで!と叱らずあたたかく見守ってよい理由【森のようちえん現場から】

お友だちを遊びの輪に入れない…意地悪しないで!と叱らずあたたかく見守ってよい理由【森のようちえん現場から】
友だちを遊びの仲間に入れてあげられない、逆に友だちの輪になかなか入れない…親としては気になってしまう遊びの中の友だち関係。園舎を持たず園児たちが毎日森に通う"自然保育"を実践する「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長・野澤俊索さんに語っていただきます。
目次

「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育ての中で気になるテーマについて自然保育でのエピソードを交えつつ綴っていただくこの連載。

この春に入園して集団生活が始まった子にとっては、たくさんのお友だちと遊ぶ機会が増え、お友だちとの関わりのトラブルも出てくる時期ではないでしょうか。
そんな"遊びのグループに入れる・入れない"が今回のテーマ。親はそんなシーンがあると、つい「仲間に入れてあげて」など、口を出してしまいがちですが…

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5月下旬、木々の青葉の色は深みを増し、季節がゆっくり進んでいます。今年は早い梅雨の訪れにもう雨が続く毎日になりました。

この春、幼稚園・保育園に入った新入園の子たちもそろそろ新しい環境に慣れて、お友だちができ始めた頃ではないでしょうか。

遊びの仲間に入れないのは意地悪だけではない

あっちでは砂遊び、こっちではごっこ遊び。子どもたちは小さな集団をつくって遊びに夢中になっています。そんなとき決まって、

「いーれーて!」
「だーめーよ!」

という声がどこからか聞こえてきます。

仲良くしてほしいなあと思う大人の気持ちをよそに、子どもたちは言葉巧みに拒んでいます。意地悪しないでと言いたくなりますが、今のところその心配は無用です。なぜでしょうか。

新入園の今、子どもにとって仲良しのお友だちは新しくできた自分の居場所のひとつ。
お母さんの側や先生の側から離れても安心できる、自分で新開拓した第3の場所なのです。
やっと自分で手に入れた安心の居場所です。

子どもたちはその自分の居場所を守るのに一生懸命。また離れて寂しい思いをするのはもうこりごり。だからその場を死守する意味で「だぁめ!」と叫んだり、手をあげてしまったりします。

子どもたちにとって、新しく自分の居場所を見つけられたことはとても素晴らしいことです。そしてその居場所を守りたい気持ちも当然のこと。私たち大人はその気持ちに共感して、寄り添っていたいと思います。

大好きなお友だちとふたりの世界から始まって、誰かが来て押し出されたり、自分が入って押し出したり。こころの”おしくらまんじゅう”を繰り返しているうち、仲間が増えていき、いつか自分の居場所はいつもここにあると信じられるときがきます。

「いれて」
「いいよ」
と安心して言えるようになるのは、そんなときがきてからなのかもしれないですね。

子ども独特の決まりの中で色々な気持ちを経験していく

さて、遊びの輪から押し出された子の悲しい気持ちはどんな風に変わっていくのでしょうか。

先日、砂でケーキを作っていた子たちがいました。
そのうち大きな声で「このあそびはもうはいれないよ!」と言って、ある子を手で押し出したりしていました。「どうして?どうして?」と納得がいかないその子は、寂しそうな顔でケーキ作りのすぐそばに座って、ひとりで遊び始めました。

「どうしたの?」とみんなに聞くと、怒った声で「ここはもうはいれないのに、はいってくるの!」と言います。

「そう。もう入れないんだね」と言って今度はひとりでいる子に聞きました。
「どうしたいの?」
「いっしょにあそびたいの」とその子は言いました。
「そう。遊びたいんだ。ねえ、一緒に遊びたいんだって」とみんなに言うと、また怒った声で「だめ!」との返事。

それを聞いて"ああ、なんていじわる!"と思いながらも「そうか、それじゃ仕方ないや。じゃあ、ここで遊ぼうか」といって、その日はケーキ作りのすぐ横で一緒に遊んでいました。

後日、また子どもたちは泥団子をつくって遊んでいました。
今度は前に一人だった子も入っています。子どもたちに聞くと「きょうは、はいっていいごっこなの!」と言っています。その子は「うれしい」と言っていました。「そう。今日はうれしいんだって!」と伝えるとみんなもうれしそうにお団子づくりを続けました。

じつは、その横で、次に入れない子がひとり。
「どうしたの?」と聞くと、「(入れてもらえるのを)まってるの」と寂しそうにぽつり。今度はこの子の気持ちに共感して一緒にここにいました。

立場がコロコロ変わるたびに、いろんな気持ちを経験しているのですね。そして子どもたちの世界には子どもたちなりの独特なきまりがあるようです。

子どもにとって、大人が考える"こうしたほうがいい"という解決法は、あまり重要ではありません。

それよりも「わたしのきもちわかってよ!」という気持ちが大きいものです。

目に見えない気持ちに共感して、認めてあげることで子どもたちは落ち着いて前に進んでいけるようになるのです。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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